09

男は驚きで顎が外れそうになるほど口を開き、銃を取り落とした。小虎はその隙を見逃さず、男と千百合を引き剥がし「高坂目ぇつぶっとけ!」と叫び、男を殴った。


油断していた男は簡単に吹っ飛び、殴られた頬を押さえ後退る。ただ、男の視線は殴られた小虎ではなく、脅した真也に向き叫ぶ。


「ば、ばっ、化け物――!!!」


怯えた目で叫ばれた言葉。真也に突き刺さる奇異の目。


――いつものことに真也はあははと笑う。ツキン、と軋む胸の痛みには慣れっこで……悲しいと思う前に諦めが来ている。


……だが「平城は化け物じゃねえよ!黙れ!!」と声を荒げ激しく怒る小虎を見て、目を見開く。そして沙弥もまた、平城の肩にぽん、と手を置き「大丈夫」と言う。


「誰に何を言われようが、どう見られようが、私や小虎は平城の味方だから……気にすんな」
「……うん」


温かい言葉に真也は思わず泣きそうになり、胸が一杯になった。行動して良かった……、と忌み嫌う力を持つ拳を握りしめた。


「あ、高坂は!?」


小虎はきょろきょろと姿が見えなくなった彼女を探す。すると、千百合はすぐそばで――「お兄ちゃん、あれ。わたしとわたしの友達に乱暴したの」といつの間にか呼び出した高坂組若頭、兄・高坂万里に告げ口していた。


「……へぇ……」



地を這うような声に、その場に居る全員が、ぶるっと背筋を震わせる。




「あ――……あ……」
「覚悟は良いだろうな? 俺の妹に手を出したってことは」




指一本じゃすまねぇぞ。




男は万里のドスの利いた声に泡を噴き、ひっくり返った。……蛇足だろうが、その後の男の行方は分からない。


小虎は「ふふふ…山月くんとその友達を撃とうとしたやつなんて…しずめばいいの…」と無表情で言う千百合が恐ろしく見えた……。



prev next

bkm



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -