夜を迷える子羊 | ナノ


  05


「…あ。もしもしバカか? いずみ保護した……だぁぁーうるせぇ! 電話口で叫ぶな! 早く身元引き取りにこい! じゃあな」


ガチャンっ、という力のこもった切り方が聞こえ少女は顔をしかめた。壊れる、と言おうとして口を閉じる。余計なことは言わない方が良い、と一瞬にして思ったからだ。


「まさかー、おまわりさんといずみちゃんが知り合いだったとはねー」

九重は空気も読まずのんびりと言う。おまわりさん、と呼ばれた三十過ぎとは思えない童顔警察官は肩をすくめ「世の中っていうのは案外狭いんだよ」と言う。


「……ていうか、いずみはなんで俺からそんなに距離とんの!」
「……暴力奮うじゃん」
「は!?」


和泉は机越しでも童顔警察官から距離を取り、ずっと男の袖を握りしめていた。


「おまわりさん、ダメだよー。こんな可愛い子、殴っちゃ」
「殴ってねぇ! つーか、いずみは俺に怒られるの怖いだけなんだろ?」
「……」


少女は無言でうつむく。図星であった。


だが、童顔警察官は肩を竦めて「別に怒らねぇよ」とあっさりと言った。




prev / next
しおりを挟む

[←main] [←top]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -