夜を迷える子羊 | ナノ


  08


「いずみちゃんさぁ…中学生でしょ? もっと子どもで良いんだよ。わけわかんない反抗して喚き散らして大人に迷惑かけて成長して良いんだよ。子どもなんだから、大人に甘えてワガママ言って振り回せよ。――ね?」


満面の笑みで言われて少女は唇を噛み締めた。男の言葉に少女の心は波打った。大人に甘える方法なんて忘れた。頼ることすら、していなかった。小さな弟のためにも、自分がしっかりしなきゃいけなかった。


――でも、この男は甘えていいと言う。ワガママ言って振り回せ。子どもなんだから。


「――ホントにいいのかよ」


溢れそうになる涙を堪え、男の服をつかむ。


「いいよ。このえくん、いずみちゃんに頼られたらうっれしー!」


男は冗談を混ぜ返しながら言い、少女は照れ隠しに「きめぇ」と小声で言った。



あ、可愛い。



男は反射的にそう思い少女をぎゅーとハグする。照れているのか恥ずかしそうにしている姿は中学生そのもので、やっぱり子どもっていいなーと和んだ。


まぁ、その雰囲気は……青筋を立てた童顔警察官にぶったぎられたが。


「コノッ…村崎ッ…交番で中学生口説くんじゃねぇ!」
「あはは、おまわりさんごめんなさーい!」



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