07
そう考えて警察官に「大丈夫」と言おうとしたとき、後ろからふんわりと抱き締められた。
「……な、なんだよこのえ…」
「いずみちゃんはどっか遊びにいきたいとことかないのー?」
「遊びにいきたいとこ?」
「うん。俺、連れてってあげるよー? どうしても家に居たくないとき、連れ出してあげるから、我慢しないで」
「……っ」
少女は男に優しく頭を撫でられて薄く涙の膜が張った。自分より精神年齢が低い、と罵ったがやはり年上は年上だった。
男は少女の悩みも聞かず、あの場に留まろうとしただけで「家」に居たくないのだと察し、少女を庇おうとしてくれる。
「このえってバカかよ」
「頭はバカだねー」
「初対面の中学生になに言ってんだよ。仕事あるんだろ。忙しいんだろ。私なんかに構ってる暇なんてねーだろ」
「いずみちゃん、両親にそう思ってるんでしょ?」
「ちが……っ」
見透かされた言葉に間髪入れず否定の言葉を紡ごうとするが、遮られる。
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