夜を迷える子羊 | ナノ


  09


ほどなくして、和泉の両親が彼女を迎えに来た。九重は和泉の両親が迎えにきたならお役御免だという風に立ち上がった。


「じゃ、俺はこれでー」
「……行くんだ」


少女はじっと男を見ていた。少女に名残惜しそうに見られ、男の心はグラリと揺れる。


――なんであんなに大人っぽいのに、こういうときだけ子どもっぽいのかなー?


男は少女のギャップに苦笑し、ポケットから一枚の名刺を取り出して和泉に手渡した。


「これ、俺の連絡先と住所ー。いつでもかけてきていいからね」


どっか遊びにつれてってあげる、と和泉は甘く囁かれ……だが彼女はまったく動じることはなく「このえ、ホスト天職じゃん」と的が外れたことを言った。


「て、天職……少しは嫌がるとか……」
「荒稼ぎして美味しいもんおごって」
「和泉ちゃんがめついーー!!」


にこやかに言葉を交わす二人の姿に童顔警察官はチッと舌打ちし、少女を帰るよう促した。――性格は良いが少し女癖が悪い九重。そんな奴に友人の娘を関わらせるのは気分がよくなかった。


「和泉もささっと行け。親も心配してたんだからな」
「……うん」


渋々、という感じで和泉は交番を去ることにした。だが「またね」と手を振った男に目を見開き、同じように小さく手を振った。


「またな」




prev / next
しおりを挟む

[←main] [←top]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -