90 可愛すぎるんですが
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「…どうしよう」


目の前にはみんなが小さくなった姿。みんな元々着ていた服が大きいために襟元から肩が出てしまっている。ああもうほんと、なんでこれがあたしの鞄に入ってるんだ…!


「…どういうことだよ」
「…」


幸い景吾くんと仁は飴を食べていなかったので小さくなってなかった。どういうことだよ、と聞いてきた景吾くんに視線を向けてそのまま黙っていると、なんとなく察しがついたらしく「あいつらか…」と小さく呟いた。うん、たぶんそいつらだよ景吾くん。仁はなにも言わずに足元に転がっているキヨ君を見ている。


「なんかね、若返る飴を作った発明家がいるらしくて」
「…」
「前あたしも被害にあったんだけど、まさかこんなにあるとは…」


ゆかと駆け寄ってきた英二を抱き上げる。ああ小さくなった英二も可愛い…でもそんなこと考えてるときじゃないよね、今は。大まかに説明すると、景吾くんは少し考えるようなそぶりを見せた後、携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めた。


「ああ、俺だ。光と馨を出せ。…あ?」


どうやらかけたのは光と馨のところだったらしくて。景吾くんに任せておけば大丈夫かなあと思ってまわりを見回す。するとみんな一律で同じ年齢になったんじゃなくて、3年生は3歳、2年生は2歳、1年生は1歳、というように分かれていた。(まあ見た目だから確かじゃないけど)英二を下ろして、もうほんっとに赤ちゃんって言う感じのリョーマを抱き上げる。生まれたばかりっぽいなあ。すーすーと眠っているリョーマの頬をぷにぷにとつつく。(足元で英二が「俺もだっこしてにゃ〜」と言ってたけどムシ!)(っていうかこの状況を疑問なく受け入れてる英二すごいわ)


「あ?…ちょっと待て、どういうことだ」
「?」


すると景吾くんがそんな声を上げたので景吾くんの方に視線を向ける。仁があたしの隣に来たので見上げてどうしたのかな、と首を傾げる。仁は未だにこの状況を理解していない(というより理解したくない?)ようであたしの腕の中で眠るリョーマをじっと見ていた。


「おい、なに言って…――!ちっ」
「どうしたの?」
「パリだ」
「え?」


景吾くんが急に怒鳴って、乱暴に携帯の通話ボタンを押して切った。その後に舌打ちをしたのでどうしたのかと聞くとパリだ、と一言。…なんとなく、分かってしまったような気がする。


「行ってくる」
「は?」
「あいつら捕まえてくる」
「え、ちょ、景吾く…――」


ぱたん、と携帯をとじて景吾くんが部屋を出て行った。あいつらを捕まえてくるって、パリまで光と馨を探しに行くのかな。なんだかなんの説明もなしに行ってしまったから頭が付いていかないけれど、あたしのジャージのズボンを引っ張ってくる英二の姿を見て現実を受け入れないといけないなあと思った。(こう思ってる時点で結構のんきだよね、あたし)


「…で、どうします?」
「…」


残された大人(?)はあたしと仁の二人。おそらくパリまで行ってしかも人探しをするんだから景吾くんは今日中には帰ってこないだろう。どうするよ、と視線を向けると面倒くさそうに仁がその場に座るので、あたしもそのままぺたんと座り込んだ。その途端に英二があたしの膝の上にのってきたけど、…うん、可愛いけどちょっとうざいよ英二…!(可愛いんだよ、すっごく可愛いんだけど)


「…」


そのまま周りを見渡してみた。どうやらなんとなくだが自分たちの状況が理由はともかく理解できてきたようで、それぞれが遊び始めたり自分の体をじいっと見てみたりし始めていた。(結構みんな図太い神経してるよね)


「とりあえずさ、寝るときは1部屋にまとまった方がいいよね」
「…」
「大広間に布団しいて寝ようよ。仁も絶対来てよね」


来なかったら迎えに行くから、みんなで。そう言うと仁はみんなで迎えに来るのを想像したのか少し嫌そうな顔をした後に「…わかった」と小さく言ってくれた。その後すぐに小さい子用の服が景吾くんから届いて、それはちゃんと青学、氷帝、立海、山吹とそれぞれのユニフォームと同じ色で分けられていてみんなにそれに着替えてもらった。うん、みんなおそろいで可愛い。


「なあゆか、あとべは?」
「亮たちを元に戻すためにパリに行ったよ」
「ぱり、ですか?」
「うん」


ああやばい。みんな可愛すぎだよほんと。だんだん自分が危ない人になっていくような気がしてならないのですが、そんなことはないんだよ。景吾くんのことを聞きに来た亮と、その後をテクテク着いてきたチョタに頬が緩みます。


「おまえ、かおがゆるんでるぞ」
「わっ、若…!」


若ちっちゃい!と言うと嫌そうに顔をゆがめられた。でもそんな顔もすごく可愛いんですけど。こっちおいで〜とリョーマを抱いているため方腕だけを広げると「だれがいくか」と言われてしまいました。残念。






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