89 あの飴だよね。
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「ふー腹いっぱい」
「食べた食べた!」


夕食が終わって、みんながそれぞれ満腹と言葉を漏らす。あたしは強制的に周の隣に座らされて、反対隣には英二がいた。正面には手塚君と乾君が座ってて、手塚君は食事が終わったらちゃんと手を合わせて「ごちそうさま」と言っていた。(他の皆は大声で言っただけだった。あ、でも周とか真田君たちは言ってたかなあ)


「ゆか〜」
「ん?どうしたの英二」


するとペタン、と英二があたしの名前を呼びながらへばりついてきた。肩にあごが当たってて痛いよ英二。とりあえず頭を撫でて(ちょっと優越感)どうしたの?と聞くと「なにかない〜?」とのことだった。


「んー、なんもないと思うけどなあ」
「飴だっ!」


どうやら食後のおやつ的なものが欲しかったらしくて、なんにもないと思うけどなあと言いながら鞄の中を探ってみる。するとあたしより先に英二の手が伸びてきてぱっとなにかが取り出された。英二が言うには『飴』。だけどあたし…――


「(鞄の中、入れた覚えがないんだけどなあ…)」
「ゆか、いっぱいあるからみんなで食べていい?」
「え?あ、うん、いいよ」


やった〜!と英二がみんなに飴を配りに行った。うーん、でもやっぱりそんな飴あたしは持ってなかったはずなんだけどなあ…。よく見てみようと思うにも、英二が袋をがっしり持ってるから袋の銘柄は見えない。すると全員に配り終わったらしく、(真田くんとか手塚くんにまで渡してるよ)(すごいな英二)あたしのところに来て「はい!」と英二が袋を渡してきた。


「(ん?この袋って…)」


なんだか見たことがあるような気がする。…どこでだったっけ。ぱくっぱくっとみんなが飴を口に放り入れるのを見ながら考える。するとぽんっとひとつの予想が浮かんだ。(たぶんというか絶対そうだよこの袋…!)




「ちょ、待ってみんな食べちゃダメ!」




しかし時すでに遅し。ボンッ!という大きな音がして、みんなが小さくなってしまった。



やっぱりこれ、馨たちのあの飴だよ……!









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