91 幼稚園じゃないよ
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「じゃあみんなお風呂に行こっか」
「「「はーい!」」」


なんか保育園の先生になった気分だ。仁も一緒に入るんだよ、と言って引っ張って行くと仁は本当に嫌そうだった。まあ普段から不機嫌そうなのはあるけど今回はほんとに嫌なんだなあ。でも来てもらわないとあたしが困る。


「じゃあ、ちゃんとみんなのこと見ててね、仁」
「…別に見なくても平気だろ」
「でも身体能力は3歳児以下だから。大会前なんだからケガなんかしたら大変だよ?」
「…」
「だからお願いね、仁」


お風呂場について、男女別れる入り口のところで話す。お願い、と言うと渋々ながら納得してくれたのかあたしの頭をがしがしと撫でた。だから好きなんだよなあ仁は。ふふ、と笑うと仁の手があたしの腕の中のリョーマに伸びてきたのでひょい、とそれを避ける。


「リョーマはあたしが連れて入るね」
「…は?」
「あと何人か引き受けるよ」


そう言うとまた「は?」と言った仁に首を傾げる。あたし何かへんなこと言ったかなあ?


「ばかだろお前」
「え?だって仁みんな連れて入るの大変じゃない?」
「…」
「でしょ?だからいいよ」


絶対みんなを連れて入るの大変だもん。ね?と言っても仁はなかなか頷いてはくれなかった。うーん、まあ気持ちも分かるけどだって仕方ないし。(あたしだって恥ずかしい事に変わりないし)(だっていくら小さいとはいっても中身は中学生だからね)


「でも一応選ばせてね。うーんと…チョタと若、それから薫ちゃんおいで」
「「「は?」」」
「3人だけじゃあんま変わらないか。じゃあ英二とジロちゃんと亮もこっちで入ろっか」
「「はーい」」
「…おれ?」


最初の3人は急に呼ばれた事に反応できなかったのか、それともまさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのか呆気に取られたような声を出した。そして英二とジロちゃんは元気よく返事をしてこっちに駆け寄ってくる。うん、素直でよろしいよ、可愛いし。亮はおれ?と自分を指したまま固まってしまった。うーん、こっちの反応も可愛いけれども。


「はいはい、じゃあさっさと入ろうねー」
「ゆかちゃんゆかちゃん、おれも!」
「おれも!」
「うーん、忍足くんとキヨ君はダメ」
「「なんで!?」」


なんでって、なんだか身の危険を感じるんだよ。それがみんなには分かっているのか真田くんが「けしからん!」とか言いながら柳生くんと二人で忍足くんを男子浴場に引っ張っていた。キヨ君は仁が首の後ろを持って持ち上げて、中に放りいれた。すると足元にぎゅ、と握られる感覚。


「赤也?」
「おれもゆかさんとはいりたい!」
「…赤也はダメ」
「えー!」
「ダメ」


それは赤也で、ぎゅーっとあたしの足にしがみ付いていた。俺も入る!と言ってしがみ付いてる赤也は可愛いのだけれども、お断りさせていただこう。赤也が不満の声を上げるけどここは譲れない。だってさ、弟の仲のいい友達と一緒にお風呂に入るのは、ねえ…?だから、ダメ。ごめんね赤也、嫌なわけじゃないんだよ?と言っても「おれもー!」と足元から離れてくれなくて、どうしようかと迷っていたら真田くんが戻ってきて「あかやおまえもか!けしからん!」と言って赤也を引っ張っていった。…うーん、真田くんって反応に困る。(こんなこと言ったらいけないんだろうけど)


「じゃあ仁、よろしくね」
「…タオル巻いて入れよ」
「分かってるよ〜」


そんなの当たり前じゃないか仁。リョーマをもう一度抱きなおして、「じゃあ入ろっか」とみんなを連れて女子浴場へ入った。






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