88 お昼ごはん
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「ゆかさん」
「あ、リョーマ。今休憩中?」
「そうっす」


山吹の皆に頑張ってねーと声をかけて、そんな事を考えながら歩いていると後ろから声をかけられた。そこにいたのはリョーマ。さっきあたしが渡したドリンクをくわえながらラケットを担いでた。休憩中?と聞くとそうだと返ってくる。ならお昼休みももうすぐだな。早くご飯作り始めないと。


「そっか。あたしご飯作ってくるね」
「ゆかさんが作るんすか?」
「え、たぶん」


そう言うとリョーマに「たぶんって何すか」と笑われてしまった。だってそういえばご飯作れとか言われてないよね。


「景吾君に聞いてからのほうがいいかな?」
「そうじゃないんスか?俺はゆかさんの料理食べたいけど」
「へ?でもあたしより景吾君の家の人が作ったほうが美味しいと思うよ?」
「…そういう意味じゃないんだけど」


だから景吾君に聞いてみるね、と言うと何故かリョーマが不機嫌になってしまった。なんでだ。どう考えてもあたしのより景吾君の家の人が作ったほうが美味しいに決まってるのに。(たぶんプロの人なんだろうし)


「ゆかさんってさ、鈍感だって言われない?」
「…はい?」


どういう意味でしょうか。あたしが鈍いとでも言いたいのですかリョーマ君。言われないけど?と言うとリョーマは大して興味もなさそうに「ふーん」とまたドリンクを一口含んだ。んん?


「ゆか」
「んあ?景吾君」
「なんだその声は」


くく、と景吾君に笑われてしまった。いやね、いきなり声かけられたら誰だって気の抜けた声が出ますよ。いつの間にかあたしの後ろにいたらしい景吾君がぽんぽん、とあたしの頭を叩いた。なんですか子供扱いですかコノヤロウ。(どいつもこいつも…!)


「なに?」
「夕食はうちのシェフがすでに作ってるからお前は何もしなくていい」
「そうなの?じゃあ配膳だけすればいいんだね」
「ああ」


やっぱり作ってくれる人がいたんだ。リョーマの言ってた通りだったね、とリョーマに言うとこくんと頷いた。んーでもそうなるとせっかくリョーマがあたしの料理食べたいって言ってくれたのに悪いなあ。


「あ、リョーマ今度うち来る?」
「なんでスか?」
「そしたらあたし料理作るよ?」


そこまでして食べたいってことはないかもだけど。だって今日は無理だからまたっていうことにするとうちに来て食べてもらった方が一番早いしね。でもここのシェフと比べちゃダメだよ、と言うとリョーマはふっと笑って今度行くと言ってきた。可愛いなあ、ほんと。






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