84 ホスト部緊急合宿
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「…で?」
「だからあ、ゆかに食べられちゃったの」


さっきから何度も言ってるじゃん、と光が口を尖らすのを見てハルヒが何度目か分からないため息を吐いた。ひざに乗っている女の子があのゆかだなんて、ハルヒには到底信じられない。


「さっきゆかが食べた飴は、ただの飴じゃないんだ」
「…どんな飴なの?」
「知り合いの発明家の作品で『これを食べればすべすべ赤ちゃん肌に☆』っていうやつ」
「…」


うさんくさい、と思ったのはハルヒだけじゃないはずだ。実際、後ろにいる鏡夜も大きなため息を吐いたのをハルヒは聞いた。どうやら食べるか食べないか、食べるとしたらどっちが食べるかで悩んでいたところ、ゆかがきて先に食べられてしまったらしかった。


「『赤ちゃん肌』じゃなくて『赤ちゃん』になっちゃったんだねえ〜」


ゆかの頬をぷにぷにと突つきながらハニーがのん気な声を出す。今のゆかは着ていたセーラーは大きすぎたために着ることができなかったのでファッションデザイナーである双子の母親に子供服を貰い、それを着ていた。もとのゆかの意識はないらしく、外見2歳児のゆかはハルヒの膝の上でハニーのうさちゃんと戯れている。(初めは環がゆかを膝に乗せたがっていたがハルヒが却下した)(なんだか危ないと思ったらしい)落ちないようにハルヒにお腹に手を回されて、落としてしまったうさちゃんを取ろうと手を伸ばしていたゆかにモリが取って渡してやると、ゆかがにへらと笑った。


「か、可愛いぞゆか…!」
「(確かに可愛い…)」
「「でもゆかが食べてよかったかもね〜」」


順番に環、ハルヒ、双子である。ハニーとモリも目を合わせて「可愛いね」と言っており鏡夜もゆかをじーっと見ていた。くるっとハルヒの方に向いたゆかはにこにこしながらハルヒに向かって手を伸ばしている。その二人の姿を見てますます可愛い可愛いと騒ぎ始めた環にハルヒが嫌そうな視線を送った。しかしその視線に気づかないのが環だ。


「それにしてもゆかは変わらないね」


ひょい、とハルヒの隣にいた光がゆかを抱き上げた。急に視線の高さが変わったことにゆかは「うあ」とまぬけな声を出した。そのゆかを見てまた環が可愛い可愛いと連呼している。相変わらずハルヒの視線は注がれたままである。じーっと抱き上げたゆかを見る光にゆかは、にこっと笑いかけた。


「かわい〜」
「あ、光ずるい!僕も!」
「ちょっと」


そのゆかを見て光がぎゅーっとゆかを抱きしめた。それを見て僕も僕も、と声を出す馨と光の間に入って、今度はハルヒがひょいっとゆかを抱き上げた。あ、と光が声を漏らす。


「ゆかさん苦しそうだよ」


光に抱きしめられて苦しかったのか、ハルヒにへばりついてゆかがふう、と息を吐いていた。


「ひかちゃん、かおちゃん」
「なんですか?ハニー先輩」
「ゆかちゃんが戻る方法はないの〜?」


モリの肩に乗ったハニーに聞かれて、光と馨が視線を合わせた。そんなことはまったく考えていなかったのか、二人はきょとんと首をかしげた。


「…あ」
「1日経てば戻るんだっけ?」
「そんなアバウトな…」


確かそうだったと思うけど。と言う双子にハルヒが怪しげな視線を送った。しかしそんなことは急にすくっと立ち上がった環によって遮られた。



「急遽、ホスト部緊急合宿を開始する!」







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