96 聞かぬが吉
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「…」


あたしは今ちょっとだけ機嫌が悪いです。もうこれは低血圧っていうだけのことじゃない気がするんですけどどうですか。


「…仁、どういうこと」
「……知るか」


機嫌が悪いのはあたしだけじゃなかったみたい。昨日寝た状態のまま手で頭を支えている仁に聞けば知るかとだけ言われてふい、とそっぽ向かれてしまいました。なんでだよ〜とか寝ぼけた頭のまま座った状態で仁を見下ろす。反対隣を見てみれば未だにリョーマはすうすうと寝息をたてていて…って、当たり前だよね、だって今は朝の五時だもん。


「…なんでこんな時間に起きるの…」


あのね、小さい子っていうのはもっともっと寝るんだよ!なんであんた達こんな時間から起き上がって枕投げを始めるんだ!朝練がないからもっともっとゆっくり寝れると思っていたあたしはちょっとイラッとしてきましたよ。(そもそもあたしが起きた原因が枕が顔に命中してきたからだからね)仁も騒がしさで目が覚めてしまったらしくて、また寝る体勢に入っていた。そしたらトテトテ、と近づいてくる小さな物体。


「おはよう、ゆか」
「あ、おはよう周」


近づいてきたのは周で、おはようとにっこり笑って言ってくれた。うん、さっきまでのイライラなんか一気に吹っ飛んでしまうくらい可愛いです。もういいや煩くても、と思い始めたのだけれどそこに気付いてしまうのが周なんだよね。


「きげんがわるそうだね」
「うーん、今はそうでもないんだけどね」
「なにかあったの?」


こてん、と首をかしげる周めっちゃくちゃ可愛いんですけど…!普段は大きいからか可愛いなんて思わないのだけれど、この大きさのみんなは可愛すぎるよね。ちょっとね、みんな起きるのはやいよね、とだけ言って笑うと「ふうん」と周が一瞬目を開いた。…なんだ。


「ちょっといってくるね」
「え?」
「ゆかはもうすこしねてなよ」
「え、あ、うん」


そのまま周が枕投げをしているみんなのところに行ってしまって、あたしはもう少し寝てなと言われたのでそれを見送り終えることなくまた布団を被ったんだけど、どういうわけか急にしーんとなってしまいました。たぶん周がなんかしたんだろうけど、怖くて出れませんよ。…なにがあったのか今度誰かに聞いてみよう。(誰も答えてくれなさそうだけど)





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