あまのじゃく
「わたしは貴方がキライです」
「奇遇ですね、おれも君がキライです」
笑って言い放てば、笑って言い返された。きっと同じ顔してる。平行線なわたしと貴方。
「大っキライ」
「それならどうして会いに?」
心底判らない、振りをして聞いてくるから、両手を広げて羽織ってるマントを見せつける。
「菓子を出しなさい」
「ハロウィンのつもりですか?」
腕組みをして見下された。どうやらお菓子は用意してないみたい。だったらおもいっきりイタズラしてやろうか。
「判りました、イタズラしてやりましょう」
「要りません。菓子もありません」
水鉄砲を顔面に向かって撃つと同時に手を掴まれて逸らされた。残念、肩にしか掛けれなかった。
「手を離しなさい」
「その前に言うことがあるでしょう」
手首を強く掴まれて前にも後ろにも動かない。貴方の笑みもひきつってる。本気で怒ってるかも。どうしよう、そう思ってもわたしの口は正反対の言葉を紡ぐ。
「言うことなんてありません。もう一発食らいますか?」
「減らず口」
引き金を引く前に水鉄砲を奪われてしまった。もう撃つつもりはないからいいけれど。それより手首の拘束がキツくなるばかりで。
「返しなさい」
「必要ないでしょうが」
手を引かれて近付く。気に食わないことに頭ひとつ分、背の高い貴方が屈めば額と額がくっつきそうな距離になる。息がしづらい、手が冷たい、体が熱い、考えがまとまらない。
「貴方、何様のつもり?」
「おれ様ですよ」
心臓が、うるさい。
「いい加減、菓子を出しなさい」
「キライな人間から欲しいんですか?」
貴方の目に映るわたしが見えた。わたしじゃないような顔で貴方を睨んでいる。どうかしてるわ、貴方も、わたしも。
「キライだから集(たか)ってやります」
「成る程」
わたしは嘘つき。菓子なんて要らない。イタズラはもうちょっとしたいけど、水鉄砲も要らない。手も離さないで。離れて行かないで。キライ、なんかじゃないから。
「大っキライだから、イタズラしてやります」
でも、素直にはならない。だってそれじゃあツマラナイでしょう。だから嘘を吐く、高鳴る鼓動も火照る体も無視をして。わたし達は嘘つきね。言葉はみんな嘘。
「それならオレも、」
視界いっぱいの貴方に息を飲む。いつの間にか腰にも貴方の腕が巻き付いていて、もう逃げられない。
Trick and Treat
耳元で囁かれて、暗闇に落ちるのは
20111030
こじつけハロウィーン!わらい
ススム モクジ モドル