かなしいはなし


会話文ばっかりです




「は?嘘言わないでよ、センセ」

「嘘なんか言わないよ。センセー医者だもん」

「えーじゃぁマジで?」

「大マジ」

「マジかー」

「マジだって」

「マジなのかー」

「マジなんだって」

「ま―」

「もういいって」

「センセ、ノリ悪いよ」

「充分のったじゃん」

「あたし余命1年なんだからもっとワガママ聞いてくれてもいいじゃん」

「っ…」

「あ、センセ今焦ったでしょ?かわいー」

「……センセをからかうの止めてくんない」

「あと1年だからガマンしてよ、センセ?」

「…ごめんな」

「え?付き合ってくんないの?」

「そうじゃなくて…担当医なのに大した事できなくて」

「あぁ」

「もっと何かできたかも」

「はいはい、暗い話はいいから!やりたいリスト作るからセンセも手伝って」

「やりたい、リスト?」

「そ!言うからメモってね。まずはー」

「は、ちょっと」

「そうだなー今梅雨だから明けたら海行きたい!あと川でしょ湖でしょ山もいいな!」

「早っ、書けないし」

「あ、花火もやりたい!お祭りも、浴衣来て金魚すくいとかね。それから秋になったら紅葉狩りとかブドウ狩りとか栗狩りとか」

「栗拾いね。てかさ、」

「冬はやっぱ雪遊びだね!雪だるまかまくら雪合戦ソリ、あと鍋もいっぱい食べたいな」

「雑炊なら食べてもいいけど雪は、」

「春は桜の下でお花見したい!外でいっぱいごちそう食べるの。それから、それからね」

「ミワ」

「…なに、センセ」

「そんなの許すと思ってんの?」

「…思わない。だからやりたいリストって言ったじゃん。……やる事じゃないしできる事でもない。分かってるよ」

「そっか…」

「でも!うじうじグダグダ生きるなんて嫌!少しくらい楽しみが欲しいの」

「うん」

「そのくらい、いいでしょ…?」

「…なるべくやれるといいな」

「センセ!」

「だけど絶対に無理は厳禁だからね!センセの許可を取る事!」

「もちろん!センセも一緒にやるの!」

「あ、そう」

「センセ、あと1年よろしくね!」

「こっちこそよろしく」



そう言ってセンセは笑った。崩れかけた砂山みたいに脆い笑い方だったけど

ダメだなぁセンセ、医者ならもっと綺麗に優しく笑わなくっちゃ。じゃないと患者に怯えられちゃうんだから



かなしいはなし
   その始まり




あたしを看取る時はちゃんと笑ってよね、センセ


20110117


ススム モクジ モドル



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