無意識程怖いものはない

 
5月、そこまで暑くはない気温とはいえ人が集まり締め切った体育館は人の熱気が溜まり暑い。

梟谷は学園は毎年、5月と2月に球技大会がある。
5月は親睦、2月は思い出作りのようなもんだ。バレー部というこで案の定バレーに出された。
順調に勝ち進み準決勝まで行ったが次は3年1組。木兎さん達のクラスとだ。

「へいへいへーい!このまま優勝すんぞ、お前等!」
「へいへい、あかーしくん!へいへいー!」

木兎さんが居る時点で勝利は3年1組に間違いないのだが、お祭り大好きな2人が騒がない訳がない。目立ちたがりの木兎さんはうるさいのは分かっていたが応援している名字さんもうるさい。

「木兎さんくれぐれも怪我はしないで下さいよ」
「赤葦、俺がそんなヘマをすると思うか!?」
「するとしか思えないんで言ってます。前の球技大会で怪我をして練習試合出れなかった事ありましたよね」
「テンション下がるような事言うなよ赤葦…」
「そうだぞ、あかーしくん!!木兎は単純なんだから余計な事言っちゃダメだぞー!」

応援席からそう言う名字さんだが顔は面白がっている。
しょぼくれモードになった木兎さんだったが、流石木兎さんのクラス。木兎さんの扱い方をわかっている。木兎さんが決めると大袈裟じゃないかってくらい褒める。クラスメイトのお陰で絶好調の木兎さんを止めれる事なんて出来るはずもなく、呆気なく負けてしまった。

「どうだ!赤葦!俺最強!!!」

凄いドヤ顔で言ってくる木兎さんに「凄いですね」と言うと満足したのか他のバレー部の人を見つけた木兎さんは嵐のように去っていった。

あの人本当自由だな

走っていく木兎さんの背中を見ながらそう思っていると、どこからか名字さんが「あかーしくん、」と声をかけてくれた。

「お疲れ様!やっぱり木兎は凄いねー!単純だけど」
「まあ、あの人のプレーは見ていて気持ちいいですからね」
「スパイクとか見ててスカッてするよねー。私には出来そうにないわ!」
「名字さんの運動しているの想像出来ないですもんね」
「あ、あかーしくん、運動音痴だと思ってるでしょー!?でもその通りー!」

ちょっとからかったら可愛いらしい反応。満面の笑みで答える名字さんに釣られて、笑いそうになるが照れ臭いのでバレないように表情を隠していると「けど、」と急にいつものふざけた口調のトーンではない声を出した名字さんにビックリしていると、次の言葉で簡単に表情筋を崩されてしまった。

「あかーしくんのバレーっていつも綺麗だね」

名字さんの言葉に思わず「は?」と言ってしまった。
なぜなら普段の練習中、確かに見にくる人は居るが名字さんの姿は見た事がないからだ。

「実はたまに見てるんだ練習。放課後ちょっと用事で残ってる時とか。あんまりジッと見てると練習の邪魔になるといけないから、本当遠くから少しだけ」
「…そうだったんですか。別に名字さんならバレー部の方も邪魔だとか思わないと思いますけど」
「ダメだよー!真剣に練習してる人達の邪魔は絶対しちゃダメ!!」

ワザとらしく胸の前で腕をクロスにし、そう言う名字さんにビックリする。

この人にもそんな感情あったんだ。
いや、失礼なのは分かっているがいつものふざけた感じの人からそんな事を考えてるのが意外だった。

「勿論皆上手で凄いんだけどさ、楽しそうにバレーしてるよね。最初は楽しそうでいいなあって見てたんだけど、あかーしくんのセッター姿が綺麗で実はちょいちょい見にいってた。」

真っ直ぐこちらを見ながら言う名字さんの言葉に反応が困る。凄く嬉しい反面、どう返していいのか物凄く困る。

「あかーしくん、耳赤いよ?」
「……誰のせいだと思ってるんですか」
「え?私のせいなの?」
「名字さんのせいですよ。急に変な事言うからです」

照れ隠しにそう答えると、「えー」と頬を膨らませ不満げな顔をする名字さん。

「けど本当の事だよ?私あかーしくんのバレーしてる姿好きだよ」
「っ、ありがとうございます」

覗き込む形で俺の目を真っ直ぐ見て言う名字さんの視線を外す事ができなかった。

ちなみに球技大会は猿杙さんと小見さんがいる3年2組が優勝をし、その日の部活は拗ねた木兎さんがめんどくさくて名字さんの事を考える余裕がなかった。




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