俺にとっても問題児

 
「はい!」と元気の良い声と共に目の前に現れたのは、いつもより少しシワの残るハンカチ。
2年生の教室に他学年がいる時点で目立つのに名字さんは特に目立つ。
木兎さんと名字さんは梟谷では問題児として目立っている。黙っていれば可愛らしい名字さんとあんなのでも全国に行く強豪校でのエースの木兎さん。それに良くも悪くも目立ちたがりの2人。

この前の水遊びも、あの程度の騒ぎは最早梟谷では日常茶飯事だ。
木の上の野良猫を助けようと2人して木に登り、降りれなくなって大騒ぎを起こし、廊下で騒いでいたらテンションが上がった2人が校長のお気に入りの花瓶を割ったり。他にも色んな事をしてきた2人。思い出すだけでため息が出る。

「あかーしくんどうしたの?ため息なんかして」
「いえ、何でもありません。ハンカチ返してくれるの意外に早かったですね」
「あかーしくんに会いたいなあって思ってどうしたら自然に会えるかなーって考えてたんだけどさ!ハンカチ借りてたじゃん!って思ってさあ」

思わず名字さんの言葉にビックリして反応に困る。
多分この人の会いたいは特別な意味じゃなく、ただ喋り相手いないかな〜とかのお友達感覚の会いたいだろう。そんな事は分かっているのに、口元が緩みそうになる。

「あかーしくんのハンカチ綺麗にアイロンしてあったから私もアイロンかけて返そうかなーって思ってたんだけど、アイロンの仕方いまいち分からなくて気合でシワ伸ばした!!」

グッと親指立てて何故かドヤ顔で言う名字さん。

「別にそんな事気にしなくていいですよ」
「いや、借りたからには綺麗に返したかった!気持ち的には!!けど焦がしそうだからやめた!」
「……確かに名字さんは漫画みたいな事しそうですね」

否定しきれないーと笑いながら言う名字さんからハンカチを受け取り、自分のズボンにしまう。
用件も済んだし名字さんは帰ってしまうんだろう。少し自分の心の中で寂しい気持ちが生まれる。
だか、なかなか名字さんは帰ろうとしない。けどペラペラと喋る訳でもない。
なんとも言えない空気が流れ、これは声をかけるべきか悩んでいると名字さんが先に口を動かした。

「あかーしくんってさ、何か一緒にいて落ち着くね」
「そうなんですか?」
「うん。何か一緒にいるだけで癒される!!!」
「…なんですかそれ」

本当、人の気も知らないで何ドヤ顔で言っているのか。本当ため息が出る。

「あー、あかーしくんまたため息!幸せ逃げるよ?」
「それは嫌なんで気を付けます」

何を気をつけるのか全く分からないが、そう答えると名字さんは満足げだった。
このまま一緒に居ると周りの目も気になるが、それ以上に自分の気持ちを乱されそうだ。どうしたものかと考えていると、どこからか聞き覚えのある声がする。

「名字ー!あかーしー!!今日昼一緒に食おうぜー!」
「お、いいね!そうしよー!今日頑張って弁当作ったから誰かに見て欲しかったんだあ」
「何かおかずちょーだい!」
「えー、木兎そのまま全部食べそうだから嫌」
「そんな事ねぇよ!大丈夫!!!」
「木兎の大丈夫って言葉ほど信用出来ないものはないよね」
「それは言えますね」

心外だ!なんてワザとらしく頬に空気を入れ、また嵐のように去っていく木兎さんを見てケラケラと笑う名字さん。

「木兎拗ねちゃった。機嫌直しに行ってくるね」
「はい、お願いします」

パタパタと走っていく名字さんの後ろ姿を見つつ、返してもらったハンカチを見てみる。
いつもと違う柔軟剤の匂いがするハンカチから何やら紙が出てきた。
二つ折りにされてる紙には「ありがとうね」と綺麗な字で書かれていた。

「はあーーーーー」
「赤葦なに!?機嫌悪りぃの?」

不思議がるクラスメイトを無視してハンカチをまたズボンにしまった。




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