水音が響く


外の明るさが嘘のような暗さに少しだけ緊張した。
肌がじんわりと水気を帯び、僕は眉間にシワを寄せた。

火付け石を叩き、松明に火をつけたその時だった。


水滴が天井からポタリと何度も落ちてきた。



「うわ!!水かかったー嫌だー!」

洞窟内にはなまえの声が響いた。

「姉貴ィ静かにして欲しいでガス」

「いやいやいや!!むりむり!ギャー!!」

「なまえ、大丈夫?」

「いやいやいや!!むりむり!!ギャー!」

「全然ダメみたいだね。」

とにかくなまえはこの洞窟から早く出たかった。

「水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ…せめて氷にしてくれ!!!!!ヒャドォ!!!!!」

辺りの水が氷に変わる。


「ギラァァ!!、凍らせるなよ、てかいつその呪文おぼえたんだー!?」

それをエイトがまた溶かし水にもどした。

「昨日の夜…イヤァ!!水かかったー!!!」

頭、背中、首、顔、騒げば騒ぐほど水滴は落ちてきた。

「とにかく落ち着け。まだ水晶の<す>の字もみえてないから」

「水晶っていわないで、<水>って字を使わないで下さいィ!」

「ほら、大丈夫だから。」

ぽんっと頭に手を乗せられた時に

あらためてエイトの腕にしがみついたまま歩いていたことに今気付き、自分の腕をパッと離すと

「なまえ、別にダメなら掴んでていいよ?」


その言葉に、こいつ…本気で鈍感か。と少しだけ呆れたが、素直にもう一度腕にしがみついた。


ヤンガスがうらやましそうにこっちをみたが

「ヤンガスお前じゃキモい」

「ヤンガス差別でガス!!!世界中のヤンガスさんに謝るで「この前とほとんど同じ下りじゃねーか…あっ」


左腕に鈍い痛みを感じたのと同時にバランスを崩した。右腕はまだ組んだままであったために手をつくことができずに、エイトを巻き込む形で倒れてしまう。


「兄貴ィ!!!!姉貴ィ!!!!!」

「ちょっ、」


地面に着く寸前、僕は気がついた。


地面は乾いてなどいないことに



「い…いイヤアアアァァァァァァア!!!!!!!!!」


激しい水音がしたと思うと
叫び声が洞窟内に響き渡った。







****





なまえは、ただ呆然と自分の体を眺めた。

張り付く服と髪の感覚。
その髪先から水滴が滴り落ちる。



今まで二人がいた場所に犯人が笑みを浮かべていた。


スキッパーのむれ。

呆然としていたなまえにはみるみるうちに、顔が赤くなる。怒りが込み上げて来ているみたいだ

「ふざけんなよ…?この僕に水なんて水なんて水なんて………」

空気を切り裂く音がしたと思うと先ほどまで楽しそうに笑っていたスキッパー達はまっぷたつになって落ちた。


スキッパー達に倒した後、ヤンガスはなまえの形相を見て、『鬼』を想像した。
怒りが収まらない彼女にエイトはゆっくりと近づいた。
鋭い目付きで倒れたスキッパー達を睨み付けていて近づいていることに彼女は気づいていないらしい。


エイトは腕を振り上げた。


「えいっ」


エイトが、なまえの首をスコンッと叩くと、グデッとなまえが倒れた

そのまま、抱き上げた

「お城にいたとき、なまえが一回噴水に落とされた時があって、その落としたコを三分の二殺しにしたことがあったんだよねぇ、懐かしい」

「へぇー三分の二殺し……ほとんど死にかけでがす」

「危なかったよあれは…」

「まさか兄貴……」

「そんな、水に落とすなんて怖いことしないよ………うん」


少しだけ間があった後、
二人はぼちぼち歩き始めた

「そういえば、兄貴と姉貴はいつからの付き合いなんでげすか?」


「うーん、聞いてもつまんないとおもうけど。それは…さ」









****







俺が身寄りがなくてトロデーン城に拾われた少しあと………。

ミーティア姫と遊んでいた時だったかな

ボロボロな女の子一人が城の前で倒れてたんだ。

あちこちアザだらけ、踏まれたような跡のついた汚れた服は、元の居た場所で酷い扱いを受けていたことは、小さい俺でもわかった。


ミーティア姫が兵士と医者を呼んできて、女の子を運んで手当してる途中
女の子は目が覚めて、悲鳴をあげた。

「イヤァァァァ!!!!殴らないで!もう逃げたりしないから、お願い!!!!!」

もうガラガラな声でこう叫んだ。

その時思わず、女の子を抱きしめた。

そしたら驚いたようにしたあと
俺が抱きしめたままでいたら
女の子は泣きだした

「君の名前は?」
「……なまえ」

それがなまえとの出会い。


それから俺達は仲良くなっていったんだ。



なまえは俺とミーティア姫より二つ下で
ミーティア姫は妹みたいにおもってた。

大きくなってからは
お互い、拾われた立場だったし
同じ兵士になった

女の子は危ないから、ミーティア姫お付きのメイドになればいいってトロデ王が言ってたんだけど

剣の筋はいいし、力はかなりあるし、なにより本人の強い意志で
異例だったんだけど兵士になった


「エイト、頑張ろうぜ!」


そんな矢先のことだったのに、


この旅に出なくてはならなくなった。

………



「関係ないとこまで話しちゃったね」

「そんな事があったんがすね」

「あぁ、いろいろね」

ちょうど、そんな話が終わったころ


「…ちょ、エイト、降ろしてくれ」

目を覚まし、自分がなぜ肩にのせられているのかわからない様子で、視点が定まらない彼女をエイトはゆっくりとおろした。




***






なまえはわざとふたりよりも早く歩き、ぶつぶつと宛もなく呟いた。

「……おもくなかったかな。」

死ぬほど恥ずかしい、なぜ肩に背負われていたのかわからない。何してたんだ僕は。

何ならここで溺れ死にたい
あ、でも水で死ぬのは嫌だな…

ごたごた考えて歩いていると
何かにぶつかった。

ぷよぷよした感覚

「いたい、なにすんだ!」

下から声がきこえたかと思うと
どつかれた

「うぐっ」

こんなんで負ける僕じゃない

「うぉらぁぁ!!!必殺なまえチョップーー!!!!!!」

「おい、すとっ「うぉらぁぁ!!!!!!!」

おおきづちにチョップをくらわすなまえを見て

「無惨でがす」

「あそこまでやらなくても…」

ヤンガスとエイトはおおきづちに同情した。


「エイトーエイトー、ぷよぷよだぜこいつー」

「ど、度胸があるのはわかったから離してくれェエ!」

おおきづちは目が回っている

「なまえ、可哀相だから離してやって…」
「おう!」

すっと離すと

「さっさと通りやがれ!!!!!」とおおきづちに
怒鳴りちらされてしまった。










***





それからしばらく歩くと

最下部についた

他の場所とは違う
そんな緊張感が流れていた。

さらに進むと

流れる水の中に水晶玉が浮いている。
近くに水が跳ねて時折顔にかかった

(なまえはすでに三歩程度避難済み)

「やっとここまできたかァ…」
エイト肩を鳴らした

「そうでがすね…長かったでげす。」


エイトが水晶に手を伸ばした
その瞬間だった

水を撒き散らして
飛び上がってきた赤いヒレのモンスターがいた


その瞬間なまえの顔に水がかかった。


「やっと来よったかァア!!!!」



ヤンガスは後ろで殺気を感じた。

「お前がこの水晶の持ち主か?」

エイトは正直に「いいえ」と答えようとした瞬間だった。


「あぁ…そうだ。この僕がその水晶の持ち主だ……」

その場にいた、ザバン以外の二人、いや二人+1匹(トーポを含め)は背筋が凍った。

「やっときよったかこの馬鹿者めが!!!」

「誰が馬鹿者だって…?」

「あぁん?お前が滝壺から水晶玉なんて落とさなかったらわしはな…」

「誰にお前とかほざいてんだ…この赤ヒレ野郎が…………。」

エイトとヤンガスはこのまま戦闘になると思い、武器を用意した。

ザバンさん、貴方は運が悪いようです。

「お前こそ、誰に口を聞いておるのじゃ人の頭に……「誰がお前だか聞いてんだよ、この赤ヒレ野郎がァァァ!!!!!!」

思いきりなまえは銅の剣で
    ・・・
ザバンの頭の傷を開くように切り裂いた。

「何するんじゃ、小娘が…痛たた…、わしはもう怒ったぞ…」

ザバンが手を叩き、手をあげると同時に
黒いキリが巻き上がった。
キリが纏わり付く。
ヤンガスは酷い顔色に変わり苦しそうにしているのだが。

何故か、なまえ、エイトの前で掻き消されてしまった。

二人は少し驚いたが
向こうはかなり驚いたようだ。

「わしの偉大な攻撃が効かないだと!?そんなはずが…「効かないとなればこっちのもんだ!!!!」

なまえとエイトがザバンに切りかかる

「己ェ!!!!」

ザバンが叫び

振りかぶりなまえを爪で引っ掻いた。


なまえの服が裂けた。
若干皮膚に触れ、血も少し出ていた。

が、今のなまえには、


「あぁ、いてーなぁ……やっぱ、ぶった切るしかねぇようだな。」

黒い笑みを浮かべている。

「エイト、やるよ」

「あぁ、例の試しにか……」

二人は同じ構えをして、深呼吸した。

「「 か え ん 斬 り 」」

炎を宿した剣で、二人でザバンを切った。

サバンは熱いのやら、痛いのやらで
苦しんでいる

「冷やしてあげてもいいんだけど…?」

ニヤリと笑うと

「ヒャドォ!!!!!」

氷がザバンを突き刺す。

「うぐっ」

ヤンガスがチャンスとばかりに
おおきづきで振りかぶり叩いた。

ガコーンという頭の音と割れた氷の音と

「古傷がァァ!!!!!!」

と、ザバンの叫ぶ声が

洞窟の中に響き渡った。





***






「痛てて…。古傷が痛むわい…それもこれもおまえらのせいじゃ!!!!!」

三人はきょとんとした

「えっと…どういうことでしょうか?」
エイトが尋ねたが全く(ほとんど)無視され勝手にザバンは話し出した。

「……では、水晶玉を滝壺に落としたのはお前達ではないのか!!」

説明をしようとすると

「えーい、みなまでいうな!!!!」
ザバンは悔しいそうに
首を振り回した。

「それに、わしの偉大な攻撃を一切受け付けぬその体………そういえば、水の流れにのってこんな噂を聞いたぞ」








***





静まった城

一瞬空気が張り詰めたと
思うと

イバラが城から溢れ暴れ出した

イバラは城中を囲み城壁を壊し、

中にいた人達を巻き込んだ

悲鳴が響いたと思うと

イバラは
大人しくなった。

大人しくなった時イバラの城に、

残った男女がいた。

その二人は起き上がり


二人は顔を見合わせて
頷いた。





***


「そうか、お前らはあの城の生き残りなのか……」





すこし、しんみりとした
空気が流れたが、
ザバンが口を開いた

「とにかくお主らはこのわしに、勝ったんじゃから、なにうえ、コレがほしいかは、かわらんが、水晶は持ってくがいい!」

乱暴に水晶を投げられたが、
エイトがよろけながら、受け取り、水晶を手に入れた

背中を向けようとした瞬間

またザバンが口を開いて
さけんだ。

「持ち主に会うことがあったら伝えておけ……
ものをむやみに落とすんじゃない!!っとな!!!!」

ザバンの声は
洞窟中に響き、耳がキーンとした。






ザバンから水晶玉が受け取れて
一安心した僕は、頭の中に

水なんて単語は無かった。

「水晶玉ゲットでガス!」
ヤンガスは浮かれていた

「ルイネロさんに渡したら、本当にドルマゲスの場所が掴めるのかな。」
エイトは、もしかしたらこの水晶玉を粉々にされるかも知れないと思っている
何故なら、要らない と言って捨てたのだから、見たくもないだろう。


「なんとかなるよ」

走って出ようぜと声をかけた
なまえは忘れていた水なんて単語を


ヤンガスが先頭に立ち走りだした瞬間だった。

ヤンガスの足は後ろに水を蹴りあげた
水は跳ね上がった、と思うと

なまえに飛んだ。

そして、思い出した。

水という単語を


「イヤァァァァア!!!!」


ヤンガスは全力疾走で逃げた
生命の危機を感じたのだ。


「水なんて、水なんて…………」

その後ろにいたエイト。

ヤバイ、俺…どうすりゃいいんだ…


なまえは呪文叫んだ
「ヒャドォォ!」

水が、氷に変わった

向こうでヤンガスがこけたようで、
ドーーンという音がした。

「ねぇ、なまえ…水はダメなのに氷はいいの…?」


「当たり前だろ!!!!!」


当たり前なのか、ちゃんとメモしとこ
エイトは紙とペンを取り出した。


「水なんか見たくもない!!!!!」













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