必ず立ち上がる

赤い血を流す事無く消えて行く命。
生まれ変わり、転生し、永遠に輪廻するはずだった魂は私に何を伝えたい?私は何をしなくてはいけない?

『世界の破滅の手助けと』
『世界の平和の象徴と』

私の中の何か
私の中のリドル
私の中の私―――

「―――」
「―――のか?」
「ああ―――」

話し声で目が覚めた。重たい体を起こす動作で、眠っていたのかと理解する。
リーマスとムーディだろうか?ここはリーマスの寝室のようだ。

「目が覚めたかい?これを飲むといい」
「リーマス…あ、えと…」
「後見人とはな、大層な面々に囲まれてお前も息苦しいだろう」
「え?ああ、いや、お世話になってます?」

いずれ世に広がる話ではあるが、もしムーディが私の正体に気付いていたとしたら、間違い無くリーマスも目を付けられているだろう。
部屋を出るムーディを見遣り、溜め息を吐いた。

「また、夢を見るのかい?」
「何て言うか、今回は少し違うかもしれない」
「違う、とは?」
「自分が落ちて行く感じ…よく、わからない、かな」
「ムーディの部屋で何かよくないものでも見た?」
「よくないもの…」

あの、トランクだろうか。それとも、棚に並んでいたポリジュース薬だろうか。
どれもこれも、吐気を覚えた。

「ねえ、リーマス」
「なんだい?」
「私がどんなのでも、何をしても、堕ちるとこまで堕ちたとしても…傍に、いてくれるの?」
「いるよ。突き放されたって、いるさ」
「…狡い女よね」

いつだって、リーマスを苦しめているのは私だというのに。
あの時―――ヴォルデモートに殺された日、私を守ってくれたのはリーマスだった。

「私、リーマスに言わなくちゃいけない事、あったんだった」
「なんだい?」
「私が消えたあの日…確かに私は死んでしまったけれど、何度もヴォルデモートから私を救ってくれたものがあったの」
「うん?」
「あの白い靄。この間、私の力が狼の姿になった話をしたでしょう。あの時私とヴォルデモートの間に立ち塞がったのは、人のような、狼のようなものだった」
「それが、君を守ってくれたのかい?」
「そう。ハリーを守ってるのも、リリーの愛情。私にそんな盾は無いと思ってた。でも、ちゃんとあったんだね」
「それが、私だと?」
「うん。リーマスがいるから、私は強い力を持てる」

急に抱きしめてくるものだから、手に持っていたカップを落としそうになった。

「ありがとう、リーマス」

だから、勇気を下さい。
何が起きても、立っていられる勇気。前に進む勇気。私が進むべき道を、自分で切り開いていく為に。

「ねえ、リーマス」
「なんだい?」
「水中で呼吸をするには、どうするのが一番いい?」
「それは―――って、何を言わせる気だい」
「ばれたか」
「―――…」
「ご、ごめんなさい。自分で考えます」

にっこりと笑ったはずのリーマスの目が笑っていない。何度か見た事のある表情だが、この顔に言い勝てる人がいるなら見てみたい。

「君なら、考えるまでもないだろう?何だって出来るんだから」
「ううん…?」

なんだってできる?
ああ、そうか。

「灯台もと暗し」
「何が起きても対応できるようにね」
「勿論、任せて」

第2の課題
私にとっては手軽な、変身術を使う事にしよう。

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