再び

昨晩はリーマスの部屋で過ごし、早朝こっそりグリフィンドール寮へ戻った。
静まり返る談話室を見るに、誰も起きていない様子。真夜中までずっと騒いでいたのだ、皆まだ寝ているのだろう。

それから少し経ってハーマイオニーが談話室へ、続いて男子寮からはハリーとロンも下りてきた。

「ねぇ、僕ら昨日聞いちゃったんだけど…ハグリッドって半巨人だったんだ!」
「ハグリッドがマダム・マクシームに話している所に偶然出くわしちゃって…」
「へえ、そうだったんだ」
「コウキ、驚かないの?」
「え?まあそうかなって思ってたし、ハグリッドに巨人の血が流れていたって、恐ろしいわけじゃないでしょう?人狼に対する偏見と一緒よ」
「ああ、そうか…」
「そうそう。まあ、確かに危険な場合もあるけど、やっぱり自分の目で見てきた人達だもの。気にしないよ」

危険かどうかだけで判断するのは難しい話だ。
ヴォルデモートも最初は普通の人間だったが、今となっては人類に恐怖を与える存在。私だって、いつそちら側に取り込まれるかわからないのだから、危険と言われても否定は出来ないだろう。

「そういえば、金の卵の事は何かわかったの?」
「あ、忘れてた」
「もう、コウキったら!ハリーは?」
「僕もイマイチ」
「大丈夫なのか?二人とも」
「ま、なるようになるでしょ!ね、ハリー」
「うん、頑張ろう」

連日の豪華な食事に胃もたれを起こし始めていた私は朝食をパスし、一人で部屋に戻る事にした。
睡眠を取らなくてもいいとはいえ、真夜中までどんちゃん騒ぎをした上に、朝方まで起きていたのだから少しは体を休ませようとベッドに潜り込み、目蓋を閉じる。

ふと暗闇の中で視界が揺れるのを感じた。
これは、昔リドルと会っていた場所に行く時の感覚に似ている。もう、あの時程ヴォルデモートとの繋がりは無いはずなのに。

寒気が走り、目蓋を開こうにも体が動かない。金縛りのようにびくともしない体に焦り、冷や汗が出てくるのを感じた。

駄目だ、



―――…



「また会った」
「…リドル」
「嫌に冷静だね」
「どうしてまた、ここに?」
「君が君である限り、こうして引き合う。僕を呼ぶのは君だ」
「私が?」
「君であり、君ではない」
「え、全然意味がわからない」

暗闇に浮かぶリドルはいつもの無表情では無く、少し寂しげに見えた。気のせいかも、しれないが。

「そうだろうね。まだ、思い出さない?」
「何を?」
「残念だ」

会話が成り立たないのは毎度の事だったが、より一層不可解だ。私が忘れているものは何だと言うのか。

「君は大切な使命を忘れている。いや、忘れるように操作されている、が正しいかな」
「使命?ヴォルデモートも言ってたわ、私の使命って何!?」
「まだだ」
「何なのよ、一体…」

その時、リドルを型取る暗闇が少しずつ白んでいるのが見えた。この暗闇の世界で白い物が現れたのは最初の一回だけだ。

「リ、リドル?」
「許して」
「え?」

足から少しずつ、その存在は白くなって行く。目が眩む程白くなった下肢からリドルの物ではない素足が現れ、人型がぶれる。

「お願い、」

心臓の辺りが苦しい。頭に響くようなその声は、リドルと重なっている白い何かの物なのだろうか。
リドルなのに、リドルではないそれ。その声に反応する私の心。私であり、私ではない。
私は誰で、リドルは何をしたくて、白い人影は私に何を訴えているのか。

ああ、駄目だ。
夢の中だというのに、意識が朧気になっていく。

「全ては、君が知っているんだよ」

最後に聞こえた声は、はっきりとしたリドルの声だった。
その瞬間、映画のエンドロールのように一気に頭に映像が流れ込んでくる。

金の卵の中身、第2の課題、第3の課題。
ゴブレットが転がり、笑うヴォルデモートに、磔にされた自分。
最後に、私に杖を向けたのは―――

「コウキ?」
「っ!」

全身に電気が走ったような衝撃に目蓋を開いた。頭の血管が破裂しそうな程鼓動を打っている。体中の血液が決壊したダムのように駆け巡っていた。

「コウキ!どうしたの?」
「ハーマイオニー…」

治まれ、落ち着け。
自分に言い聞かせ、深呼吸をした。

「魘されてたわよ、大丈夫?」
「大丈夫、起こしてくれてありがとう」

これはチャンスなのだろうか?
私はヴォルデモートに会って、自分がどうしてここに連れてこられたかを知りたい。
利用する為でも、どうして私だったのか。この世界の住人ではいけなかったのか。

あの優勝杯を掴めば、ヴォルデモートの元へと行ける。それが危険だとわかっていても、私は知らなくてはいけない。そんな使命感に襲われる。

どんなに私が頑張ったとしても、この世界の決まり事―――ハリーが優勝杯を掴む事を避けられなかったとしたら?ハリーを危険に晒してしまう上に、ヴォルデモートを復活させてしまうのだ。
アバダ ケダブラに対抗する術は無い。ならば、私はどうするべきなのか―――

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