これも試練

「え、ドビー?」
「ええ。ホグワーツで働いているの!休みも、お給料も貰っているのよ!」

まだ諦めてなかったのか、しもべ妖精の人権が云々というやつ。
嬉しそうにハーマイオニーが言っている後ろで、ロンとハリーが呆れ顔を見せている。
今は変身術の時間。課題も宿題もやり終え、少しの間自由時間になっていた。

「皆さんにお話があります」

ざわめく教室で、マクゴナガル先生が手を叩き注目を促した。

「今年もクリスマスには、三大魔法学校対抗試合の伝統でもある、ダンスパーティを行います」

あ、ああ…そんなのあったような。
ふんわりと思い出した記憶を遡れば、全く楽しんでいないハリー達の姿が浮かぶ。これは、前途多難だ。

「ダンスパーティは、クリスマスの夜8時から12時まで大広間で行います。羽目を外すチャンスではありますが、めりはりを確り付けて。ポッター、ダンブルドア、少しお話があります」

チャイムが鳴り、教室にはハリーと私だけが残った。
嫌な予感しかしない私は、正直今から話される内容を聞きたくない。聞かなくてもわかっている。

「二人とも、対抗試合の選手とそのパートナーはダンスパーティの最初に踊る事になっています」
「僕、踊るつもりは、」
「ポッター、これは伝統です」
「先生、あの」
「何ですか?ダンブルドア」
「パートナーは、あー…生徒から?」
「先生とは、代表のダンスの後ならいいですよ」

駄目だよね。わかっていました。
察したマクゴナガル先生が、気持ちはわかりますけれどと付け足してくれた事が唯一の救いである。

「ハリー、どうするの?チョウ・チャン誘うの?」
「な、なんで、」
「いつも見てるじゃない、好きなんでしょ?ああ、どうしよう…全然考え付かない」
「とにかく、頑張ろう…」

その日からの目まぐるしさに、驚く暇も無い程大変だった。
ハリーも私も、見た事も話した事も無いような人から誘いを受けた。代表選手ってすごい。

最悪、仮病を使ってパーティに出ないとか、どうかな。怒られるかな。
いい年こいて仮病で怒られるのは避けたい。

ああ、と溜め息を付きベッドに突っ伏した所で談話室が騒がしい事に気が付いた。
周囲を警戒しながら下りて行くと、そこには放心状態のロンとハリーがいた。

「どうしたの?」
「ロンがフラーに断られたのよ。ハリーは、チョウを誘おうとしたみたいだけど、セドリックにあと一歩のところで先を越されたんだって」

ジニーが見事に撃沈する二人をくいと顎で指しながら言った。これが青春か。

「もう、皆どうして夕食に来なかったのよ」

談話室に入ってきたハーマイオニーが、そう言いながら撃沈する二人を見付け眉を潜めた。

「ロンが誘った女の子に振られたんだって。ハリーは誘う前に取られちゃった」
「ハーマイオニー、君、僕らのどっちかと踊ればいい!」
「残念ね。私、もう他の人に誘われているの」
「あ、そうだったの?私、てっきりロンとハーマイオニーがペアなんだと思ってた。なら決まってないの私達だけね」
「コウキもなの?沢山誘われていたのに」
「だって…」

その時、急にロンが立ちあがって叫んだ。

「ラベンダー!僕と踊らない?」
「…いいわよ?」
「え、ロン!?」

思わぬ所で出来上がったペアに、拍手が起こった。
完全に勢いだけだったが、大丈夫だろうか?

「代表同士って、駄目なの?」
「え?それは聞いてないけど」
「なら、貴方達でペアを組んだら?」
「コウキ、いいの?」
「え、ハリーこそ。私でいいの?」
「一番自然で、一番健全なペアが今静かに出来上がったわね」

一斉に談話室に笑いが響いた。
茶化され放題のペアだが、とにかくお互い相手が決まって良かった。
夕食は取っていなかったが、もう何だか胸がいっぱいの私はハーマイオニーと一緒に自室へ向かった。

「ハーマイオニー、誰と一緒に行くの?」
「…嘘じゃないからね?」
「わかってるよ」
「クラムよ」
「ビクトール?」
「ええ…」
「やっぱり!ビクトールはハーマイオニーが好きだったのよ!前言ったじゃない?図書館で」
「そ、そうね…でも、別に好きってわけじゃ…それより、コウキもハリーで良かったんじゃない?」
「うん、変に拗れなくてよかった」
「貴女の事だから、仮病を使ってパーティに出ないって言いそうで心配だったのよ」
「よくお分かりで…」

ダンスやパーティーなんてからっきしだが、こうなると少し楽しみになってきた。
ベッドに座ると、足元に先程までは無かった箱が置いてある。包み紙の中から一枚のメッセージカードがひらりと落ちた。

「アルバスからだ」
「何?」
「わ、ドレスだ!」
「ダンブルドア校長から?素敵なドレスね、きっと似合うわ!」

深いエメラルドグリーンにシルバーのラインが入ったドレスだった。落ち着いた色だが、腰にある大きめなリボンが甘さを引き出していて可愛い。
箱の中にはもう一つ袋があり、ネックレスやイヤリングも入っていた。

「ねえハーマイオニー、私がとびっきりかわいくしてあげるから!」
「本当?嬉しい!」

嫌な事は全部忘れて、クリスマスを楽しもう。
最高の思い出が作れるように。

prev / next

戻る

[ 48/126 ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -