わたしを呼ぶのは

私は名前を入れてない。
最早そういう問題でも無い。どうして私が選ばれたのか。

「コウキ、入れたの?」
「入れてないわ。いや、それでころじゃないわよ、例え入れていたとしても…4人目が呼ばれるなんて」
「コウキ・ダンブルドア!」

再びアルバスに呼ばれる。何故私がハリーの立場になっているのか…周りの視線が痛い。
こんなに注目を受けたのは、昔ここにトリップした時の大広間以来だろう。しかしあの時よりも痛々しい状況だ。
ハーマイオニーに背中を押され立ちあがったが、地に足がついていない。アルバスの前に立った時、やっと足に血が巡ったように思えた。

「アルバス…」
「…さあ、あの扉へ」

皆の視線から逃げるように、職員テーブルの横に立っていたハリーの所まで走った。

「コウキ」
「ハリー…」
「行こう」

ハリーに肩を押され、嫌がる足を無理矢理前へと動かし、扉をくぐる。
部屋の壁には沢山の肖像画があり、部屋の中心にビクトール・クラムとフラー・デラクールが立っていた。

「どちーらが選手でーすか?」
「とりあえずハリーは、そっちに行った方がいい…」
「う、うん」

ハリーが二人の横に着いた時、後ろの扉からバグマンが入ってきた。

「ホグワーツから、4人目の選手だ!」

そう言い、私の肩をばしばしと叩いた。
状況を理解出来ていない選手達は、訳がわからないという顔でバグマンを見るが、当人は楽しそうに笑うだけ。
扉が開き、アルバスを先頭に先生方が入って来た。各々困惑の表情だったが、アルバスは少し微笑んでいるようにも見える。

「私達、何週間も、選ばれたいーと願っていました!学校の名誉をかけて!なのに、オグワーツはチャンスがふたつもありまーす!名誉か、賞金の一千ガリオンを独り占めする気でーすか!」
「賞金目当てに、こんなルール違反を考えている人なんか、いない」
「…あの、私…出なくてはいけないのでしょうか?」
「選ばれた選手は競わなければならん。ダンブルドアが初め言ったように、魔法契約の拘束力だ」
「ムーディ先生」

また一人、部屋にムーディが入ってきた。
ちくりと頭が痛む。

「ハリー・ポッターにコウキ・ダンブルドア―――命を狙われた経験は御有りかな?」
「え…」

その言葉に私とハリー、リーマスやセブルスが顔を歪めた。痛い程に、その言葉に心当たりがある。

「あ、そうだ!私、ゴブレットに名前を入れていないんです」
「なんだと?」

セブルスが吠える。

「ほう…都合がいいことだな。何者かが、お前を対抗試合に出そうと考えた」

ムーディがニヤリと笑った。

「都合?私が死ぬ事を望む人が、ゴブレットに何か仕掛けたって事?」
「ああ、本当に頭の切れる生徒だな。どういう経緯かはわからん。しかし、4人目としてお前が選ばれたと言う事は、何者かがゴブレットに強力な呪文をかけた」
「でも、どうしてコウキが!」
「それはやった奴のみが知る事だ。ダンブルドアは、何か身に覚えでも?」
「…わから、ない」

重い雰囲気に、沈黙が続いた。
大きく息を吸い、沈黙を破ったのはアルバスだった。

「皆、この結果は受け入れねばならん。このまま、試合にはこの二人が出る事になろう」
「しかし、ダンブリー・ドール…」
「何か他に考えがおありなら、喜んで聞き入れましょうぞ?」

マダム・マクシーム、カルカロフは酷い形相でアルバスを睨んでいた。フラー・デラクールも、先ほどから黙ったままである。
ただその中で一人、バグマンはうきうきした様子で「開始といきますかな?」と言った。

「最初の課題は、勇気を試すものだ。競技は11月24日、全生徒、審査員の前で行われる」

クラウチ氏の説明を皆は真剣な眼差しで聞いていたが、私はそうもいかなかった。

「…」
「コウキ…?」

グリフィンドール寮へと戻る間、私はこの先の事を考えていた。

「コウキ、大丈夫?」
「あ、ごめんハリー…どうかした?」
「何か、思う事があるんだろう?」
「…私の死を望む人で…大きな魔力を持っている人なんて…一人しか考えられないでしょ?」
「…ヴォルデモート?」
「うん…」
「でも、ヴォルデモートは、力尽きて、どこか遠くの国で…」
「私たち、夢を見たでしょう?ハリーを殺す計画をしている夢」
「あいつが、どこかで力を取り戻してきている?」
「きっと。力が戻ってきて…もう、私の存在にも気付いているんだ」
「ホグワーツにまた、誰かヴォルデモートの手先がいるの?」
「ありえなく無いわ」

太った婦人の前に立ち、肖像画が開くとその先からとんでもないドンチャン騒ぎが聞こえてきた。

「私…出来ればハーマイオニーとロンに話をしたかったけど」
「そうもいかないみたいだね」

談話室に入ってからは皆にもみくちゃにされた。ハーマイオニーとロンが祝ってくれた事は嬉しかったけれど、どうしても乗り気にはなれなかった。

だけど―――これでセドリックが死んでしまう事は無い。そう、そうのはずだ。

「ハーマイオニー」

人ごみを抜け、やっとの思いでハーマイオニーの場所まで辿り着く。

「ちょっと、話があるから寮へ行かない?みんなに見つからないように…ハリーとロンも」
「わかったわ。じゃあ、ハリー達の部屋に行きましょう。私はハリーを連れて行くから、貴女はロンをお願いね?」
「わかった」

人の波の中を低姿勢で這い、ロンと共に見つからないよう急いで男子寮へと向かった。

「それで、話ってなんだい?」
「あの…まず、私が選ばれた事なんだけれど、私は、名前をゴブレットに入れていないのは知っているでしょう?」
「ええ、わかってるわ」
「何か、問題でもあったのかい?」
「あるだろう?」

ハリーが人差し指を口に当てながら言った。

「…こんな話をしたら、みんなの気分が冷めちゃうかと思って迷ったんだけど―――…誰かが、何らかの意志でゴブレットに強力な呪文をかけて、四人目に私が選ばれるようにしたみたいなの」
「ゴブレットは、三人しか選ばれないようにダンブルドアがちゃんとしていたんだ」
「でも、私が四人目に選ばれた。私は名前を入れていないのに。…どう思う?」
「…コウキを、選手にする必要があった?ハリーだけじゃなくて、もう一人として?」
「そう。しかも、私とハリーに共通してある人物は…あの人でしょう?」

そう言った時、ロンの顔色が変わった。ハーマイオニーも難しい顔付きで何か思案している。

「僕、休み中に、例のあの人が復活して、それで…僕を殺す計画を立てている夢を見たんだ」
「私も同じ夢を。私達は、あの人と繋がりがあるから…きっと、現実に起こっている事を見たんだと思うの」
「もしかして…例のあの人の仲間が、ホグワーツに潜んでいるって事…!?」
「私もそう思ったの。でも、わからない。ゴブレットがここへ運ばれてくる途中だったのかもしれない」
「とにかく、二人はこの対抗試合で命を落すよう仕組まれたのかもしれないって事?」
「そう」

沈黙が流れる。こんな話、どう答えていいかわからないだろう。私自身、理解しがたいのだから。

「でも、私は死なない。ハリーも死なせない。今回は学校で行われる事だし、アルバスも、リーマスもセブルスもシリウスもいる。絶対大丈夫」
「僕、シリウスに知らせなくちゃ」
「うん。でも、この事は言わなくていいわ。あいつ、絶対余計な事するから」
「あ、う、うん」
「だから、ハーマイオニー。また沢山勉強したいの、手伝ってもらえる?」
「勿論よ!」
「ロンは、ハリーと一緒にいて、実践に備えたり、色々手伝って欲しい」
「わかってるよ、勿論さ!」
「僕たちは、試合に備えて準備しよう」
「ええ」
「僕らに出来る事があれば、何でも言ってくれよ」
「私も、何でもするわ」
「ありがとう、二人とも」

最終試合までに、迎え撃つ準備は出来る。
殆ど無くなってしまった現代の記憶を取り戻すのはきっと無理だろう。だが、ふと過る嫌な予感はきっとその記憶によるものだ。

絶対に気を抜いてはいけない。

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