そして世界はうごきだす

「セブルス――君は、誤解している…」
「今夜、また二人、アズカバン行きが出る」
「違う」
「コウキ?」
「冷静に、考えて。シリウスがジェームズとリリーを裏切るなんて絶対に有り得ない」
「お前は、」
「学生時代の恨みで、無実の者をまたアズカバンに送り出すというのか?」

大きな音と共にセブルスの杖から蛇が出で、リーマスを縛り付けた。しかし、その前にハリーが立ち塞がる。

「どけ、ポッター」
「学生の時からかわれただけで、話も聞かないなんて―――!」
「黙れ!所詮ポッターの子供よ!どけ!さもないと―――」
「やめて!」

ハリーを押し出し、リーマスとセブルスの間に立つ。もう一度放たれた蛇は、弾かれ煙となり消えた。体が熱くなるのを感じた時には、白い靄が私を包み込んでいた。

「っ…!」
「これは、」
「貴方の気持ちもわかる。決して拭われない過去である事も重々承知よ。ただ、シリウスやリーマスの話が耳に入らなくても、私の話は聞いてくれるわよね、セブルス」

一瞬にして空気が変わった。
振り向き、リーマスの体から蛇がほどけ落ちるのを確認してからもう一度セブルスに向き合った。

「…―――そんなはずなかろう。お前は、死んだはずだ」
「言ったでしょ?私はずっとセブルスの"そこ"にいるって」
「コウキ、君は」
「リーマス、後で、話…聞いてくれる?」
「ああ、勿論だ…」

声が震えた。

「シリウス、真実を明かす時間よ」
「ああ、そうだな」
「…話が、読めないよ」

ロンが引きつりながら後退りをする。

「後で、詳しく話すから」
「スキャバーズを渡すんだ」
「ごめんね、ロン」

謝りながらも、力強く言う。ロンは躊躇ったが、スキャバーズを差し出してくれた。
私の変化に、子供達は呆然とするしかなかったようだ。だが、ハリーだけは合点がいったように、力強い目で私とスキャバーズを捉えた。

リーマスの杖から放たれた青白い光線がスキャバーズに当たり、ネズミが、一瞬にして人間に変わった。

「やあ、ピーター」
「しばらくだったね」
「…」
「ち、違う、違うんだ!ジェームズ達を殺したのはこいつだ!」

ピーターはそう言いながらシリウスを指した。
ハーマイオニーが、謎を一つでも無くすべく、ゆっくりと中立の立場でシリウスとリーマスに質問をした。
しかし、私達から語られる言葉はすべては真実。ピーターの無実が立証されるような事実など無い。
リーマスとシリウスが戦闘態勢についたとき、ピーターはロンに助けを求めた。その様子を私はじっと見つめていた。セブルスも、一言も口を出さずに聞いている。

「ハリー…君は、本当にお父さんの生き写しだ…」

しかし、ピーターがハリーに向かって話掛けた瞬間、私の中の何かが切れた。

「ふざけるな!」
「この子の前で、ジェームズの事を話すなんて、どこまで腐っていやがる!」

私の叫び声を皮切りに、続けてシリウスも捲し立てる。

「ハリーから離れて。貴方はもう少し勇気のある人だと思っていたのに」
「ひっ…君は、あの方のスパイだった!一心同体だった!死んだと見せかけて、ジェームズ達を殺したんだ!」
「なら、ヴォルデモートが復活するために、貴方は何かした?逃げ出しただけよね?貴方は恐怖故にヴォルデモートに従っていた。もう味方は居ない」
「お前は気付くべきだった、ヴォルデモートがお前を殺さないのであれば、我々が殺すと、な」
「やめて!」

ハリーが叫んだ。
個々に思い思いの気持ちがある中、こんな裏切りで両親を無くしたハリーがきっと一番辛い。なのに、ハリーは力強く自分の足で立ち、結論をだそうとしている。

「…ハリー」
「こいつは…ここで殺しちゃいけない。城にダンブルドアも、大臣もいるから、そこでディメンターのキスをしてもらおう」
「決定権はハリーにある。いいか?コウキ」
「もちろん」
「じゃあ、はやくつれていきましょう」

ピーターを縛り上げ、動けないように固定した。

「念の為、ピーターの中の魔力を抜いて、それと…」

リーマスとセブルスの手を取り、過去の私が残した彼等の中にある私の力を抜き取った。白い靄がふわりと私に収まる。

「少しは、力になれたかな」

曖昧に微笑んだ私の手を、二人とも握り返した。
リーマスに違和感は無いが、セブルスまでもそうするとは意外で思わず笑みが溢れた。
そして大きく息を吸い、本来あるべき姿を思い浮かべた瞬間―――私は昔の姿を、正確には過去のまま育った場合の姿を取り戻した。

「コウキ…」
「お待たせ、行こうか」
「コウキ、私達にも、話してくれる?」
「ええ、勿論。聞いて欲しい」

驚きと不安の入り交じる表情を向けられ、にこりと微笑みを返す。

「さ、行こうか」

ハリーの合図で、私達はホグワーツ城へ向け歩き出した。

prev / next

戻る

[ 30/126 ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -