the beginning.02






 昨日と同じコースを走っていると今日もあの男がいた。
昨日とは別の犬をかまっているが、男の口元はやはり緩んでいる。
また遭遇できないかと内心期待していた榛名は心臓がドクリと脈打つのを感じた。
それまで落ち着いていた呼吸が乱れ、足が縺れてしまう。
そしてまた、目が合った。その横を通り過ぎるまでのたった十数秒。
世界の音は消え、二人以外なにもかもが消えてしまったような錯覚に陥った。

(でもここで止まることはできない)

榛名は漠然とそう考えながら駆け抜ける。頭の中に遠く聞こえる喧騒が戻ってきた。
ばくばくと鳴り続ける心音が脳に響く。
すべての水分が蒸発してしまうのではというほどに、火照った身体が風を切って進む。
足は軽快にくるくると回転し、地面を蹴る度にふわりと飛べそうな気がした。





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