アンメンタルメルス
「あー・・・やっぱり。」
家を出る前にカカシさんに噛みつかれた首もとは赤く鬱血していた。そんなに強く噛まれた訳ではないから歯形はないけれど。いわゆるキスマークというやつがあたしの首すじにくっきりと浮かび上がっている。
カカシさんの行動には絶句してしまったけれど、連日の夜遊びをあんな風に咎められて淡い期待をしてしまったのも事実だった。
「こんなの跡、つけないでよ……」
鏡の前で赤い印に指を這わせながら、こんなんじゃお店に出られない。と呟いた言葉とは裏腹に内心、消えなかったらいいのにと思った。カカシさんに所有印を押されたようで、離れないと言われているようでほっとしている自分がいる。自分でも病んだ思考だと思う。それでも大切な人が離れていくのが怖かった。