乱れた吐息と昂ぶる心[1]
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R-18




後ろ手にドアをピシャリと閉めてわざとらしく鍵までかけてやれば、ナマエは肩を揺らし怯えた目で俺を見上げた。
その顔が男の加虐心を煽ることになんざ、これっぽっちも気付いちゃいねえんだろう。

湿って身体に張り付くブラウスの下に透けて見える肌と下着に、ぐ、と喉が詰まった。

別に、こいつが悪いわけじゃねえのは分かってる。
雨に濡れ、それでも遅刻しねえようにと走って登校してきた。
教師としては、その気概を褒めてやるべきだろう。
だが、男としてはどうだ。
てめえの女のこんな扇情的な姿を不特定多数の男の目に晒され黙っていられる奴がいるとすれば、それはもう不能か聖人君子だ。
生憎俺はそんなに枯れちゃいねえ。
それどころか、独占欲も嫉妬心も、異こいつのことに関しては人一倍強いと自覚している。
そんな俺の前で、他の男に無防備な姿を晒すなんざ許せるはずがねえ。
こいつには、警戒心がなさすぎる。
それを教えてやるのも俺の仕事のうちだろう。
流石に教師として、なんて建前は使えねえが、そんなことはこの際どうでもいい。

「仕置が必要みてえだな、ナマエ」

一歩踏み出せば、ナマエがじわりと後退った。

「待って、先生、だめ」

この後に及んでまだ俺を止めようとする。
止まれるはずがねえだろうが。
ただでさえ、嫉妬でおかしくなっちまってるんだ。
その上、目の前には身体の線をくっきりと浮き立たせた色っぽい姿。
初めて出会った時はまだ未成熟で、子供っぽさが目立っていたというのに。
この二年で、あっという間に蕾は花開いた。
俺の手で、こいつを女にした。
一から全てを教え込み、こいつは俺好みの女に育った。
今更他人になんざ渡せるはずがねえ。
この身体を見ていいのも触れていいのも、生涯ただ俺一人だ。

「待てって言われて待つ奴がいるかよ」

もう一歩足を踏み込めば、ナマエは更に後ろに下がる。
だが大して広くもねえこの部屋で、逃げられる距離など高が知れている。
呆気なく壁際に追い詰められ、ナマエは泣き出しそうな顔で俺を見上げた。

「せんせ…っ、だめだよ、」

震えた声に、唆られる。
同時に、何度も拒絶を繰り返す唇に苛立ちを覚える。

「駄目じゃねえよ」
「だって、授業、」
「俺は今日の一コマ目は空きだ」
「私はあるもん…っ」

まだ、そんなことを考える余裕があんのか。
俺はもう、沸き上がった熱をこいつにぶち込んで散々掻き乱してやることしか考えてねえってのに。
こいつはまだ、授業なんて下らねえことを心配する余裕を残してやがんのか。
腹が立つことこの上ねえ。
その格好で教室に戻り、その姿を長時間他の男の目に晒すってえのか。
一瞬だって、許せねえのに。
冗談じゃねえぞ。

ナマエの背後にある壁に片手をつき、顔を近付けた。
それは、雨のせいか涙のせいか。
長い睫毛の縁が濡れている。
絡み合った視線に耐え切れなくなったのか、ナマエが目を逸らした。

ざけんじゃねえよ、てめえ。

最後の距離を詰め、噛み付くようにその唇を奪った。
小さな唇を全て覆い、舌で無理矢理歯列をこじ開ける。
ナマエが抵抗のつもりか顔を背けようとしたから、空いていた右手で顎を掴んだ。

「…余所見してんじゃねえ」

散々咥内を貪ってから僅かに唇を離せば、ナマエが荒い呼吸を繰り返す。
見上げてくる目は一層滲み、今にも涙が零れ落ちそうだった。

「せ、んせ…」

その呼び掛けは、拒絶だったのか。
それとも、続きの催促だったのか。
どっちにしろ、俺には関係ねえ。
この部屋にぶち込んだ瞬間から、俺の取る行動はとっくに決まってんだ。
いや、この姿を目にした瞬間から、か。

「俺のことだけ考えてろ。他事なんざ考えやがったら承知しねえぞ」

そう告げて、もう一度唇に噛み付いた。



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