この熱が届く頃に[2]
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しばらくして俺の腕からやんわりと逃れたナマエは、そのままでは風邪を引くからと言って風呂を用意しに行った。

俺は革靴を脱ぎ、その後ろ姿を追う。
ラバトリーからドアの半開きになったバスルームを覗くと、ナマエが丁度浴槽に栓をしようと前屈みになったところだった。
俺に背を向けて屈んだナマエの太腿が、部屋着用のワンピースの裾からちらりと覗く。
何気ない日常の所作だというのに、二ヶ月間の禁欲生活に耐えた俺にとっては拷問のような誘惑だ。

「少し待っててね、すぐに…っ」

給湯スイッチを押したナマエが振り返ったところで、俺はその身体をバスルームに押し込んだ。
そのまま俺もバスルームに入り、後ろ手にパネルドアを閉める。

「トシさんっ?」

そして、驚きに目を瞠ったナマエの唇を熱く塞いだ。
早急に歯列を割り、戸惑いに強張った舌を引き摺り出して絡め取る。
ナマエが顔を背けようとしたことに気付き、その身体を抱きしめる。
だがそれでも身動ぎをするから、右手を伸ばして手探りにシャワーノズルを見つけ、それを目一杯に捻った。

一瞬だけ冷たい水が飛び出し、やがてそれは温かい湯に変わる。
ナマエのワンピースにも俺のスーツにも、容赦のなくシャワーが降り注ぐ。
これで、いきなりバスルームを出て行くことはないだろうと唇を一旦離してシャワーを止めてやれば、頭の天辺からずぶ濡れになったナマエが涙眼で見上げてきた。

「も…っ、トシさん…!」

濡れた髪は額や頬に張り付き、先端からは水を滴らせている。
白いワンピースも濡れて身体の線に沿い、生地の下が透けて見えた。

くそ、てめえでてめえの首を絞めてどうするってんだ畜生。

「ナマエ…」

声が震えたのは、申し訳なさのせいか。
それとも、興奮のせいか期待のせいか。
びしょ濡れになったナマエをもう一度引き寄せ、きつく抱きしめた。

「ナマエ……お前がほしい。今すぐに、だ」

少し屈み込み、耳元に唇を押し付ける。
腕の中で、ナマエがぴくりと身体を震わせた。

「俺のことだけ感じてろ…」

早くも反応を示す屹立をナマエの腰に押し付ければ、ナマエが微かに頷いて。

「……私もね、会いたかったの」

そう、呟いた。

驚いた、なんてもんじゃねえ。
寂しいとも会いたいとも、決して言わなかったこいつが見せてくれた本心。
神経が灼けて千切れちまいそうだった。

「馬鹿野郎…!煽ってんじゃねえ…っ」

もう一度、噛み付くように唇を奪う。
さっきは戸惑っていたナマエが、今度は素直に俺を迎え入れようと唇を開ける。

「…ん、ぅ…っ」

甘い吐息に誘われるように、舌を滑り込ませた。
歯茎から上顎から、余すところなく全てを舐め尽くす。
俺の首に腕を回して必死にしがみついていたナマエが、不意に膝を折った。
危うく床に座り込みそうになったナマエの腰を掴んで支える。

「は、…ぁ、…っ、」

息を乱す姿があまりに色っぽく、淫欲を唆られる。
右手を背中に滑らせて背面のファスナーを下ろし、ナマエから濡れたワンピースを奪い取った。
上下揃いの下着は恐らく薄い紫だったのだろうが、濡れて少し色が濃くなっている。
それらも全て外し、生まれたままの姿を晒すナマエを浴槽の縁に座らせた。

「あ……、トシさ…っ」

焦ったような声が聞こえたが、丸ごと無視をする。
床に膝をつき、俺よりも高い位置にあるナマエの顔を見上げる。
恐る恐る見下ろしてくる目は、慣れない状況に潤んでいた。

「しっかり掴まってろ」

上体を寄せ、ナマエの両手を俺の首に回させる。
そのまま顎を上げ、目前に晒されたナマエの胸にしゃぶりついた。

「ひゃあんっ」

一瞬後ろに仰け反りかけたナマエが、背後が浴槽であることを思い出し、必死で俺にしがみついてくる。
もちろん落とすつもりなんざ更々ねえが、俺の頭をきつく抱き寄せるナマエが渇望感を消し去ってくれるのを感じ、俺は敢えてそのまま頂を攻め立てた。

「や、あ、あ、トシさ……っ」

前にも後ろにも逃げられねえナマエが、震えながら俺の髪を強く掴んで刺激に耐える。
頭上から降ってくる甘い声に、我慢の日々を過ごした俺の身体は最早限界だった。



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