絡み合う熱情[7]
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「次は私にさせて、」

そう言った彼女の笑顔が、穏やかな微笑から嫣然たる笑みへと摩り替わった。
戸惑う俺を他所に、彼女はヘッドボードに枕を立て掛け、俺をそこに座らせる。

「ナマエ?」

俺の動揺は、仕掛けられた濃厚な口づけの前にねじ伏せられた。
一度触れ合ってしまえば、すぐさまその熱に浮かされて離れられなくなる。
舌を擦り合わせ、交互に唇を喰む。
俺が彼女の唇に溺れている間に、彼女は膝を立てて座り込む俺の脚の間に身体を滑り込ませていた。

「っ、ナマエ、待て、」

唇を離した刹那、彼女の先刻の言葉が意味するところを理解した。
しかし、止めるにはもう遅かった。
裸の身体が密着し、熱を直に伝える。
俺に抱きついた彼女は俺の耳元に唇を寄せ、そっと囁いた。

「感じて…ね?」

それは、これから行われる愛撫に、という意味だったはずだ。
だが俺はすでに、その声自体に快感を引き摺り出されていた。
腰の辺りから迫り上がる興奮に、背筋が震える。
その間にも、彼女は俺の耳殻を舌でなぞっていた。
緩々と上下する柔らかな熱を、敏感に拾い上げる。
やがてその舌は首筋を辿り、鎖骨を通り過ぎた。

あの朝の夢が、甦る。
物欲しげな顔、と夢の中で彼女に揶揄された。
今の俺もまた、同じ顔をしているのだろうか。

彼女の舌が、俺の胸筋の割れ目をなぞる。
彼女がそれを知るはずもないのに、まるであの夢を踏襲せんとばかりに乳首だけを避けて這う舌。
微温湯のような刺激に焦れ、声を上げたのは俺だった。
それもまた、あの夢と同様だ。

「ナマエ…っ、」

呼べば、応えてくれるはずだった。
だが現実の彼女は、夢の中よりも意地悪だった。

「なに?」

上目遣いに見上げられ、肌が粟立つ。
形振りに構う余裕など、疾うに失っていた。

「触…って、くれ、」

胸元で、彼女が笑みを深めた。
赤い舌が、彼女自身の唇をひと舐めして。
待ち望んでいた場所に、刺激を与えんと触れた。

「…ぅ、……く、」

その舌遣いは、夢の中よりも一層妖艶だった。
味蕾を押し付けるように舐め上げたかと思えば、一転して掠める羽根のような触れ方になる。
唇と舌とを巧みに使って捏ねられ、時折歯を立てられる。
強弱緩急に翻弄され、一度果てた欲望はあっという間に再び力を取り戻した。
唾液を絡めた彼女の指先がもう一方の乳首に触れ、摘まんでは引っ張り、押し潰してを繰り返す。

「…ひ、……あぁ…っ」

刺激を遠ざけようと彼女に伸ばしたはずの手は、気がつけばその髪を掴んで頭を胸元に押し付けていた。
与えられる快楽に溺れ、口からは荒い息と殺し切れなかった呻きが漏れる。

「気持ちいい?」

最後に立ち上がって硬くなった乳首を甘噛みした彼女が、顔を上げて首を傾げた。
見下ろせば、彼女の唇も俺の乳首も唾液で濡れ光っている。
その光景に、いよいよ下肢が震え出した。

「ああ…っ、ナマエ、…頼む、下も…っ」

腰を浮かし、昂った屹立を彼女の太腿に擦り付ける。
彼女は薄く笑い、先走りを零して揺れる俺の昂りに華奢な手を添えた。
白い指先が、血管を浮かせて赤黒く膨張した俺の欲望を撫で摩る。
あまりに倒錯的な光景から、目が離せなかった。
彼女の右手が昂りを包み込み、先走りを絡めて上下に扱き出す。
数回に一度、悪戯に先端を刺激され、その度に腰が跳ねた。

「…あ…っ、あ………く、」

ぐちゅり、と淫靡な水音が聴覚を犯していく。
それだけでも過ぎた刺激だというのに、彼女は右手を動かしたまま再び身体を倒し、俺の胸元に再び舌を這わせた。

「ひぅ……っ、ナマエ、だ、……めだ…っ」

下半身と乳首とを同時に攻められ、思考が融けていく。
性感帯はより一層敏感になり、僅かな刺激さえも拾い上げて快楽に直結させた。
彼女はさらに空いた左手を俺の下に滑り込ませ、張り詰めた双玉をやんわりと揉み込む。

「待て…っ、ナマエ…!」

追加された三点目の刺激に、腰から力が奪われていく。
迫り上がる絶頂感を抑え込もうとすればするほど、快楽が身体中を巡って暴れた。

「あ、ああ…っ、ナマエ…っ、」

立てた両膝が小刻みに震え、時折足先が意図せず跳ね上がる。
腰を引こうにも背後には枕とヘッドボードがあり、逃げ場がない。
かといって、力尽くで彼女を押し退けることも出来ず、俺は快楽の波に引き摺り込まれた。

「ナマエ…っ、だめ、だ…っ、出る…っ」

身体中を駆け巡る快楽が一点に集中し、出口を求めて迫り上がる。
その先端に爪を引っ掛けられた瞬間、欲望が爆ぜた。

「あああ…っ」

二度目とは思えぬほどの量で白濁が飛散し、己の腹と彼女の身体を汚す。
勢いのついたそれは、彼女の胸元までもを白く穢した。




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