絡み合う熱情[6]一も二もなくボクサーパンツを脱ぎ捨てた。
彼女の言葉で否応なしに昂ぶった欲望はかつてないほど膨れ上がり、彼女の熱を求めて震えている。
「…きて、」
彼女は緩慢に右手を持ち上げ、俺に差し伸べた。
その手を取って、指先に口づける。
彼女の両膝を左右に開き、先走りで濡れた昂りを宛てがった。
ぬかるんだ入口は俺を拒むことなく誘い込み、緩やかな侵入を果たす。
しかしその手応えとは裏腹に、内部は俺をきつく締め付けた。
先端を入れただけでも、襞が熱く絡み付く。
あまりの快感に、意識を持っていかれそうだった。
優しくしたい、そう思う気持ちを凌駕して、激しく揺さぶって乱したい劣情が膨れ上がる。
「ナマエ…っ、」
熱い吐息と共にその名を唇に乗せ、勢い良く腰を押し進めた。
「ああっ、あ、んん、」
仰け反る彼女の腰を掴み、最奥まで突き立てる。
彼女の中は熱く濡れ、俺の形に馴染むように蠢いた。
「…く、……ぅ、」
入れただけで果てそうになり、歯を食い縛る。
吹き出た汗が額から滑り落ちた。
ゆっくりと腰を引き、再び奥まで突き入れる。
単調な抜き差しですら、激しい快感を生み出した。
腰の後ろが痺れ、電流が背中を駆け上る。
身体中、脳髄までもが淫欲に支配された。
「…はぁんっ、ん、ふぅ…っ、あ、」
俺に組み敷かれた彼女の唇から漏れる艶めいた喘ぎ声に、鼓膜が甘く揺れる。
文字通り、夢にまで見た。
幾度も夢想し胸を焦がし、心から欲した。
その身体がいま俺の腕の中にある。
彼女の一番奥深い場所に、俺がいる。
俺の下で壮絶な色気を振り撒き乱れる姿に、俺は夢中で欲望を叩きつけた。
「…ひぁ、っあ、んんっ」
「ナマエ…っ、ナマエ、………は、」
彼女の腰が、俺の動きに合わせて揺らめく。
同時に、明かりに照らされた柔らかな胸が上下する。
あまりに卑猥な情景に眩暈がしそうだった。
「ナマエ…っ、」
「ん、んぅ…っあ、…は、じめ…っ」
ずくり、と。
昂りが一層膨れ上がった。
「ナマエ……ナマエ、っく、あ…っ」
嬌声に混じり、初めて呼ばれた己の名。
それはあまりに甘美で、心の中を熱く満たした。
危うく果ててしまいそうになり、何とか腹筋に力を込めて耐える。
だが如何なる苦心も、彼女の前には無力だった。
「…はじ、め…っ、あ、…す、き…っ」
それは、初めて彼女の声で紡がれた、俺への想いだった。
その瞬間。
欲望の芯から脳天まで、身体の中心を火柱が突き抜けた。
まずい、と思った時にはもう手遅れだった。
咄嗟に引き抜いた昂りが弾け、彼女の腹に欲望を撒き散らす。
「………え?」
俺の荒い呼吸に混じって聞こえた彼女の戸惑った声に、俺は肩を上下させたまま俯いた。
「はじめ?」
この状況ではもう、名を呼ばれて嬉しいなどと言っている場合ではない。
このようなことは、人生で初めてだった。
好きだと言われただけで、それ以上ないほどの幸福に包まれたことも。
そしてその幸福が興奮に直結し、抑え切れずに果ててしまうなどという失態を犯したことも。
「…す、まない…」
彼女の前で、このような醜態を晒すことになるとは思ってもいなかった。
穴があったら今すぐに入りたい気分だ。
しかし恐る恐る顔を上げた視線の先、彼女は怒ることもなければ馬鹿にしたように笑うこともなかった。
ただ、穏やかに微笑んで。
「好きだよ、はじめ」
そう言って、両腕を広げた。
彼女は、俺が何に興奮を煽られたのか正確に理解していたのだろう。
同じ言葉を繰り返した。
広げられた腕の中に、倒れ込む。
包み込むような温もりと柔らかさに、強張っていた身体が解れていく。
「…俺も、あんたが好きだ」
ふくよかな胸に顔を埋め、俺は小さく呟いた。
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