絡み合う熱情[4]
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ごくり、と喉が鳴ったのは無意識だった。

「綺麗、だ」

唇から零れ落ちた言葉もまた、意図して発したわけではなかった。
人間、美しいものを見ると言葉は自然に紡がれるものらしい。
俺はその身体に引き寄せられるように手を伸ばし、彼女の脇腹に触れた。
隠されていた素肌は肌理細かく、吸い付くような手触りだった。
彼女の上に覆い被さり、顔を寄せる。
僅かに頬に掛かっていた髪をそっと払い除け、蟀谷に唇を落とした。
そこから耳へと舌を這わす。
耳殻を甘噛みし、耳朶を喰み、耳の中に舌を差し込んだ。

「…ん、…あ…っ、」

吐息に交じって漏れる微かな喘ぎ声に、神経が犯されていく。
首筋へと舌を寄せ、薄い皮膚を舐め上げた。
時折小さく吸い付きながら、唇を下へ下へと移動させる。
鎖骨の上を舌でなぞると、彼女の身体が微かに揺れた。

「ごめん、シャワー浴びてない、から、」

午前中外に出てたから汗臭いかも、と。
そう言われ、今更ながらに己が潔癖を好む性質であることを思い出す。
しかし彼女の肌に擦り付けた鼻は、甘美な匂いだけを嗅ぎ取っていた。
それが彼女の汗の匂いなのか、それともまた別の何かなのか。
判別する術はなく、またその必要もなかった。

「…甘い、匂いがする、」

彼女の誘い込むような匂いは、俺の脳を酩酊させるに十分な効果があった。
肩や二の腕の内側、どこを舐めても何故か美味に感じられる。
やがて舌は、ふくよかな胸元に辿り着いた。

シーツと彼女の背中との間に両手を滑り込ませ、手間取りながらも背後のホックを外した。
両腕からストラップを抜くと、隠されていた膨らみが全て曝け出される。
頂を飾る桃色に、じくりと下肢が脈打った。
両手でそれぞれの膨らみを掬い上げれば、それが想像よりもずっと柔らかいことを知る。
そっと揉みしだけば、自在にその形を変えた。
柔らかいだけかと思えば中心にはしっかりとした弾力があり、すぐに元の形へ戻ろうとする。
恐らく一生触れていても飽きぬと、どこか非現実的なことを思った。
膨らみや、それによって作られる谷間に舌を這わせながら、唇を落とす。
そして沸き起こる衝動のまま、一点を強く吸い上げた。
顔を離せば、仄かな明かりの中に浮かぶ鬱血痕。
俗にキスマーク、と呼ばれるそれを誰かに残したのは初めてだった。
白い肌に咲いた赤い花に、心の奥、醜い独占欲が満たされる。

彼女は、俺のものだ。

脳内で、己がそう囁く声を聞いた気がした。
その後は、無我夢中だった。
幾つもの花を散りばめ、思うがままに揉みしだく。
硬く立ち上がりかけた先端を口に含むと、殺しきれなくなった彼女の嬌声が流れ込んできた。

「…ひゃ、ああ、」

その甘やかな声をもっと聞いていたくて、頂を舌の上で転がす。
時折甘噛みし、唇で喰み、押し潰すように舌先で嬲った。
それを、左右交互に繰り返す。
空いた手でもう一方の飾りを捏ねれば、彼女の腰が揺れ動いた。

「あ、あ、んんっ、」

半開きになった唇から、艶かしい声が漏れる。
いつも余裕を存分に残した態度で俺と相対していた彼女が、今俺の手で乱れていく。
その壮絶な色気に、脳髄が麻痺しそうだった。

「はぁんっ、ん、あ、あっ」

桃色だった頂は熟れて赤く染まり、刺激を求めてふくりと立ち上がる。
一方をしゃぶり、もう一方を指先で摘まんで捏ね回す。
俺の身体の下で跳ねる腰が官能的だった。
彼女の声はそのまま俺の下肢を直撃し、悉く余裕を奪っていく。
刺激を与えているのは俺のはずなのに、耐え切れなくなったのもまた俺だった。

一度身体を起こし、彼女を見下ろす。
見上げてくる瞳は熱に潤み、より大きな快楽を求めているようだった。



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