絡み合う熱情[3]上体を倒し、腕で身体を支えながら彼女に顔を寄せた。
唇を重ね、舌で表面をなぞる。
ふっくらとした下唇を喰むと、彼女の肩が揺れた。
彼女が同様に、俺の唇に舌先を這わす。
歯列を突つかれ口を開ければ、するりと舌が入り込んできた。
それを迎え入れ、甘噛みする。
そのまま逆に己の舌を伸ばし、彼女の上顎を擽った。
常に、主導権を握っているのは彼女の方だと思っていた。
しかしそれは、俺が受け身に徹していたからに過ぎなかったのだと思い知らされる。
俺が自ら彼女を求めると、彼女は抵抗なくそれを受け入れてくれた。
下ろしていた瞼を僅かに持ち上げると、眉間に少し皺を寄せて快楽を拾う彼女の顔が目に入る。
俺は堪らず、舌を更に差し入れて彼女の舌の付け根を攻め立てた。
「ん…っ、ぅ…」
鼻から抜けていく、彼女のあえかな声が劣情を煽る。
俺は唇を離して起き上がり、ブラウスのボタンに手を掛けた。
しかし興奮と緊張に震える手は拙く、ボタンを一つ外すだけでも時間が掛かる。
これでは最早、初体験の時以上に酷い有様だ。
「…す、まない…っ」
手先どころか呼吸まで乱れ始め、俺は彼女から顔を背け、上擦った声で己の不手際を謝罪した。
「なにが?」
反して彼女は、真っ直ぐに俺を見上げてくる。
その声に不快な感情は読み取れず、俺は思わず本心を打ち明けてしまった。
「その、緊張が……あんたに、触れているのだと思うと、身体が言うことを聞かぬのだ…っ」
いい年の男が、随分と情けない話だろう。
羞恥心で顔に熱が集まっていくのが分かる。
しかし彼女はそれを揶揄することも、笑うこともなかった。
シーツに投げ出されていた彼女の手が俺の左手を取り、そのまま胸元に押し付けられる。
「っ、」
思わぬ接触に息を詰める。
だが次第に、彼女の行動の意味を知ることが出来た。
「私も、同じ」
そう言ってはにかんだ彼女の鼓動もまた、速くなっていた。
手の平から伝わってくる少し速いテンポに、自然と肩の力が抜ける。
「ああ、そうだな」
目を合わせると、どちらからともなく笑みが漏れた。
彼女の手が俺の手を離したことを合図に、俺は再び彼女のブラウスに手を掛ける。
先程よりもスムーズにボタンを外し終えた。
しかし、俺の胸中が穏やかたり得たのもそれまでだった。
ブラウスの合わせをそっと左右に割り開いた途端、現れた白い肌。
首から鎖骨にかけては肉付きが薄く華奢なのに対し、その胸元は柔らかそうに膨らんでいる。
薄い紫色の下着に包まれ、シルク生地なのか少し光沢があった。
上品な同色のレースが配われている。
そこからウエストの括れまでは見事な曲線美を描き、淡い光の中で作られた陰影が艶かしい。
その下まで見せて欲しいと、黒いベルトに手を掛けた。
当然俺が普段身につけるものとは勝手が異なり、戸惑いつつも金具を外す。
そのままパンツのホックを外し、震える手でファスナーを下げた。
彼女が腰を浮かし、俺の拙い作業を手伝ってくれる。
そうしてようやく、両の脚からパンツを抜き取った。
再び、現れた素肌に息を飲む。
ブラジャーと揃いのショーツから伸びる脚は透き通るように色白で、すらりと長かった。
太腿は程よい肉付きで、見るからに触り心地が良さそうだ。
膝から下へと細くなっていき、足首は驚くほど細く引き締まっている。
全身を見下ろした俺はその扇情的な姿に釘付けとなり、しばし呼吸すら忘れて魅入った。
prev|
next