永遠に続く愛の形[6]
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「…私で、いいの?」

指輪を見つめるナマエの瞳が揺れる。

「あんたが、いい。…あんたでなければ駄目なのだ」

すれ違い、遠回りをした。
俺の弱さ故に傷つけた。
それでも、もう二度と。
二度とこの手は、離さない。

「…私も、はじめが好き。別れてからもずっと、好きだったの…っ」

そう言って泣いたナマエが、ゆっくりと俺に差し出した左手。
俺は震えながら、その手を取った。

「受け取って、くれるのか」
「うん…っ」

泣きながら、ナマエが頷く。
俺はその指に、ゆっくりと指輪を通した。

一生誰の指にも嵌まることなく終わるはずだった指輪が今、ナマエの薬指で輝いている。

「綺麗…」

宙に左手をかざしてその指輪を見つめたナマエが、嬉しそうに微笑んだ。
ジュエリーショップを何軒も回り、ようやくナマエに似合うと思って購入した指輪。
シンプルで繊細なそれは、ナマエの華奢な指に良く映えた。

俺の手元に残った、空っぽのチェーン。
その軽さに、本当にナマエが戻って来てくれたのだと実感する。
俺は黙って、そのチェーンをワイシャツの胸ポケットに落とした。

そして、もう一度ナマエを抱きしめようと腕を伸ばしたその時。
不意に聞こえた、バイブ音。

「…あ、ごめん、」

ナマエが、ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出した。

「もしもし」
『ちょっとナマエ!あんた大丈夫なの?取り込み中かとも思ったけど、流石に遅いから心配で!』

離れた位置の俺にまで届いた、大声。
恐らく、先ほどナマエと同じテーブルにいた女性の一人だろう。
顔を見合わせ、苦笑した。
お互い、共に飲みに来ていた相手のことなどすっかり忘れていた。

「心配かけてごめん。大丈夫、いま戻るところだから」

ナマエが笑いながら、電話口の向こうに説明する。
その声を、俺はあたたかい気持ちを抱えて聞いていた。

『それならいいんだけど。あ、ねえごめん!あんたのケーキ、全部食べちゃった!』

アルコールのせいか、随分と大きな声。
スマートフォンを耳から遠ざけながら、ナマエがクスクスと笑う。

「いいよいいよ。気持ちだけで充分」

そう言って、最初にケーキを目にした時よりも幸せそうに笑ったナマエに、愛おしさが込み上げた。

彼女の左隣に並び、黙ってその左手を取る。
手を握り締めて、そこにある指輪の感触に幸せを噛み締めた。

行こう、と。
無言でその手を引く。
何やら賑やかな回線の向こうに苦笑しながら、ナマエが俺を見上げた。
そのまま二人、ゆっくりと歩き出す。

「分かった分かった。ねえ、もう店に着くから。一旦切るね?」

居酒屋が見えて来た頃、そう言ってナマエが通話を終える。

「ごめんね、騒がしくって。同じ部署の子たちなの」
「構わぬ」

ナマエがいる。
俺の元に、帰って来てくれた。
その事実さえあれば、俺には充分だった。


「ナマエ」

店のドアを開ける直前、振り返って。

「誕生日のケーキは、帰りに俺が買ってやる」

そう言えば、ナマエはまるで花が綻ぶように笑った。





永遠に続く愛の形
- いま、貴女の薬指にそっと -




ねえ、ナマエちゃんさ。一君のこと、どのくらい好きなの?
え、もう。やだなあ、大好きに決まってるじゃない
あれ、ちょっと電波が悪いみたい。もう一回言ってよ
ばか、何回も聞かないでよ。恥ずかしいから




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