[12]全てを抱きしめる腕
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R-18




「ん…っ、あっ…さ、いと、さ…っ」


帯を解き、ナマエが中途半端に纏っていた着物と襦袢を脱がせた。
そして斎藤も、着流しを畳の上に放った。
お互いに一糸纏わぬ姿となり、肌を重ね合わせる。
斎藤は、その温もりに涙が出そうだと思った。

胸元の飾りを口に含み舌で転がせば、頭上から降ってくる甘やかな声。
時折挟まる己の名に、斎藤の劣情は煽られた。

ずっと、ずっと抱きたいと思っていた女が、いまこの腕の中にいる。
その圧倒的な幸福感に、斎藤は酔い痴れた。

胸を愛撫し、時々傷痕に口付け、ナマエを溶かしていく。
何をしても初々しい反応を返してくる彼女に問えば、初めてだと言われ、斎藤の興奮は頂点まで高まった。

白い太腿を左右に割り、誰も触れたことのない場所に唇を寄せる。

「ひぁっ、あ、ぁぁ…っ」

優しく舌を這わせれば、跳ねるしなやかな腰。
溢れ出てくる蜜に、ナマエが感じていることを知る。
零れ落ちる声は甘く、斎藤の下肢を直撃した。

ちらりと見上げれば、右手の甲を口元に当てて声を殺そうとするナマエの姿。
そうはさせないと、斎藤はナマエの中に指を差し入れた。

「ひゃあんっ」

案の定、狭いながらも斎藤の指を受け入れた中が蠢く。
半開きになった唇は最早抵抗を忘れ、ナマエは甘やかな声を上げて高みを目指した。

「…や…っ、あ、なに…っ、だ、めぇ…っ」
「駄目、ではないだろう、ナマエ。そのまま…っ、流れに身を任せてしまえ」

やがて斎藤に二本の指で攻め立てられたナマエが、高い喘ぎ声と共に上り詰めた。
放心したように目を見開いて荒い息をつくナマエに口付け、斎藤は微笑む。

「大丈夫か」

いきなり無理をさせてすまなかったと、斎藤は労わるようにナマエの頬を撫でた。

「眠いのならば、そのまま寝てしまえ。後のことは気にせずともよい」

斎藤はそう言って、ナマエの上に覆い被さっていた身体を離した。
しかし、腕の力で身体を支えた斎藤の背中に、回された手。
それは、ナマエのものだった。

「ナマエ…?」

どうした、と。
斎藤が優しく問えば、ナマエは躊躇いがちに唇を震わせ、ちらりと胸元に視線を走らせた。

「…あの、最後まで……それとも、その気にはなれない、のですか…?」

羞恥と不安とを綯い交ぜにした声音で縋られ、斎藤は息を呑んだ。
その瞬間、なけなしの理性はついに失われる。

「あんたは…っ」

斎藤は短くそう叫び、荒々しくナマエの唇を塞いだ。

無理を、させてはいけないと思った。
初めてならば、当然痛みもあるだろう。
心の準備もないままに、こんな昼間から最後までしてしまっては申し訳ないとも思った。
それなのに。
ナマエの言葉と仕草は、斎藤の理性を悉く打ち砕いてしまう。

「先程、言った。その傷をつけた男に憤りを感じる、と。だがそれだけだ、と」

再びナマエに覆い被さった斎藤が、その傷痕を指でなぞる。
理性を失った斎藤が感じるのは、雄の本能だった。

「訂正しよう。俺は、その男が羨ましい…っ」
「…え?」

意外な言葉に傾げられたナマエの首筋を、斎藤はきつく吸い上げた。
浮かび上がる、鬱血痕。
しかしそれはきっとすぐに、消えてしまうだろう。

「あんたに、一生消えぬ痕を残した。そのことが、ただ、羨ましいのだ」

そう言って斎藤は、幾つもの所有印をナマエの肌に残した。
そのどれもが、幾日かのうちに消えてしまう。
そう考えると、消えない痕をつけた名も知らぬ男に対する嫉妬心が膨れ上がった。

「故に…っ、この痕が消える前に、また抱かせてくれ」

刻んだ印が、消えてしまうものならば。
消える前にまた、重ねたい。

この、溢れ返る想いと共に。



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