二人の夜に溶ける[3]
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「…その、ナマエ。そのように見られていると、洗いづらい故…」

そのまま、語尾はお湯に流されて消えた。


はじめが先に入っていたのだからと、先に髪と身体を洗うべくバスタブを出た。
私はバスタブの中から、はじめが立ったまま髪を洗う姿を眺めていた。
色白の肌はきめ細かく、女の私から見ても羨ましい。
そんな女性的な部分とは裏腹に、二の腕や胸板には均整のとれた筋肉がついていて、男の性を感じさせる。
やはり綺麗な人だと思った。

そんな、私の視線に耐え切れなくなったらしい。
髪を洗い終えたところで、はじめが降参の声を上げた。
だから、その照れ方が狡いのだ。
恨めしそうに見下ろされ、再び悪戯心に火がついた。

「だったら洗ってあげるよ」

そう言うが早いか、私はバスタブを出た。
はじめはと言えば、今夜三度目のフリーズ。
目一杯に見開かれた目が、信じられないとばかりに私の顔を凝視していた。

タオルを手に取り、そこにボディソープを2プッシュ。
手早く泡立てていると、はじめが焦って後退った。

「はい、座って」
「な、何をするつもりなのだ。ナマエ、それは、」
「はい、背中から行くよー」

いきなり前からだと流石に可哀想だと思い、私に背中を向ける状態でバスチェアに座らせる。
私はその後ろに膝立ちになった。
そして、泡立てたタオルで背中を擦り始める。

「たまにはいいものでしょ?人に背中流してもらうのも」

座らせた時にはガッチガチに固まっていた身体が、徐々に解れていく。
どうやら思いの外気持ち良いらしく、リラックスした雰囲気になった。

「ああ、そうかもしれぬ。あとであんたの背中も流してやろう」

そんなことまで言える余裕があるらしい。
穏やかな口調でそう提案される。
だが、ちょっと甘い。
私はここでは終わってあげれない。

「はい、次は前ね」

反論する暇は、与えなかった。



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