二人の夜に溶ける[2]
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熱いシャワーで身体を軽く流してから、お湯の中に足を入れた。
はじめはバスタブの片側で、それ以上は無理だろうと思えるほど縮こまっている。
肩までと言わず顎までお湯に浸かっていて、まあ確かにそれなら身体は温まりそうだ。
頬から耳から、顔全体が真っ赤に染まっている。

「はじめ?ほんとに大丈夫?」
「…も、問題ない」

肩までお湯に浸かりながらそう訊ねると、上擦った声が返って来た。
その目は決して私を見ようとしない。
どうやら相当照れているらしい。
予想以上の反応に、私はつい笑ってしまった。

私が何を笑ったのか分かったのだろう。
はじめが憮然とした顔で私を見る。
その時になってようやく視線が合った。
しかしはじめは目のやり場に困ったのか、すぐさま視線を逸らしてしまった。
ここまで露骨に照れられると余計に揶揄いたくなるのが、人間の性というものだろう。

「はーじめっ」

ざぶん、と波を立てて。
私はバスタブの中を移動し、体育座りをするはじめの膝に手を置いた。

「な、ナマエっ、」
「ほらほら、ちゃんと身体伸ばして。せっかくだから疲れもとらないと」

はじめの焦った声を聞き流し、強引に膝を伸ばさせると、その上に乗っかった。
はじめの太腿の上に腰を下ろし、向かい合わせの状態になる。
案の定、はじめは再びフリーズした。
そんな彼には構わず、私は上体を倒してはじめに凭れかかる。

服を着ている時は分かりにくいが、はじめは意外と筋肉質だ。
無駄のない綺麗な筋肉が、バランスよくついている。
はじめの内心はともかくとして、鍛えられた胸板は私を苦もなく受け止めてくれた。
お湯とはまた異なる温度が、身体を熱くする。

「ふふ、初めてだね」

はじめの肩に顎を乗せてそう言えば、ようやくフリーズの解けたらしいはじめが頷いた。

「ああ、そうだな」

そして、こう続けた。

「その、たまには、良いかも知れぬな」

格好だけでいえば、先程までよりも恥ずかしい体勢ではないかと思うのだが。
視線が合わないことが幸いしてか、はたまた触れ合った温もりに安心してか、はじめの緊張が少し解れたようだった。

「うん、そうね」

はじめの両腕が、私の腰に回される。
そのままきゅ、と引き寄せられ、私はこっそりと笑った。

はじめは、なんというか、不思議だ。
いつもはすぐに照れて恥ずかしがるのに、かと思えば突然大胆になる。
しかもそれが、決して計算ではないのだ。
そんなはじめの天然っぷりに、私はいつも擽られている。


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