[15]手の届かない場所で
bookmark


最近の原田は、ナマエへのアプローチがかなり激しい。
そりゃそうだ。
ずっと片想いをしていた相手が、男と別れてフリーになったのだ。
そのチャンスを逃す男がどこにいる。

原田といる時のナマエは、なんというか、自然体だった。
笑って拗ねて、また笑って。
とても無邪気だった。
俺にはあまり見せたことのない表情をしていた。
今になって思い知る。
ナマエは俺の前ではいつも無理をして、笑顔の仮面を貼り付けていたのだと。

原田は多分、認めるのは癪だが、いい男だ。
背が高く、程よく引き締まった身体。
顔だって悪くない。
少し喧嘩っ早いところが玉に瑕かもしれないが、それを補って余りある明るい性格。
堂々としていて男らしく、面倒見も良い。
女ならばきっと誰もが、あんな奴に好かれたいのかもしれない。
ナマエも、原田と一緒になれば幸せなのかもしれない。
決して、認めたくはないが。

だがもう、俺が認める認めないは関係ない。
あいつはもう、俺の女ではないのだ。
もっと一緒にいてやればよかった。
あの日、無駄なプライドなんて捨てて追いかければよかった。
今更どうしようもない後悔が、胸の内を巣食う。
だが、どれだけ過去の自分の行いを悔やみ反省したとて、結果は覆らない。
ナマエが俺の元に戻ってくることは、もうない。

俺はこうして、目の前で惚れた女が他の男と距離を縮めていく様を、ただ黙って見ていることしか出来ないのだ。
きっとそれが、ナマエを傷つけた俺への罰なのだろう。



prev|next

[Back]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -