[7]失ったものの大きさ
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「よっし!助かったぜナマエ、ありがとな」
「いいんですよ、上手くいきそうで私も嬉しいです」
「ったく、いい奴だなお前。よし、今日は飲みに行くか!定時で上がれるだろ?」

目の前で繰り広げられる、ナマエと原田の会話。
それを黙って見ているしか出来ない俺。
誰よりも近かったはずのナマエとの距離が、今はこんなにも遠い。

「わーい、行きます!」

ナマエが無邪気に笑う。
そう、その顔だ。
俺はこいつのその表情にやられたのだ。

入社したての頃のナマエは、控えめにしか笑わない大人しい女だった。
感情の起伏が少なく、物静か。
そんな印象を覆したのは、とあるプロジェクトでのこと。
ナマエが初めて一人で成し遂げたそれを俺が褒めた時、こいつはびっくりするくらいに嬉しそうな顔で笑ったのだ。
いつもは綺麗だと思っていたナマエが、その時はとんでもなく可愛く見えて。
俺は一瞬でこいつに落とされた。

しかし今、ナマエがその笑顔を向ける相手は俺ではない。
嬉しそうな満面の笑みに、原田はそりゃもうご機嫌だ。
あの顔を見せられて、落ちない男がいるかってんだ。
だが、俺と付き合っていた3年間、ナマエは何度あの笑顔を見せてくれただろうか。
そんなに多くはなかったと思う。
俺があいつを心底喜ばせてやったことなんて、数えるほどしかないのだ。
あいつはきっと、いつも無理をして俺のために笑っていた。

所詮俺は、惚れた女を心の底から笑わせてやることすら出来ないような男だったのだ。


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