[27]突き刺さる真実
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どこに行くのかと見ていると、辿り着いた先は風間様に充てがわれた私室だった。
風間様は私を抱き上げたまま、品のある彼らしくなく襖を足で開けると中に入り、再び器用に足で襖を閉めた。
そして、てっきり畳の上に降ろされると思っていた私は、あろうことか奥に用意された褥の上に寝かされたので驚いた。
言うまでもなく、これは風間様のものである。
その上に寝るなど、言語道断ではないだろうか。
しかし当然抵抗する術はなく、私はその上に横たわることとなった。
風間様の匂いが、一段と強くなった気がする。
妙な気恥ずかしさから私が視線を彷徨わせているうちに、風間様は敷かれた褥の脇に胡座をかいた。

「お前に一つ言っておかねばなるまい」

そしてその重々しい前置きに、私は先ほどまでの恥ずかしさなど忘れて凍りついた。

「不知火は恐らくあと二日ほど逗留する。お前はその間、食事の席を外せ。酌もしなくていい」

その言い付けに、私は言葉を失くした。
食事と酒の席を外せということは、つまり天霧様と匡さんに会うなということだ。
やはり私は邪魔なのだろうか。

「私室にいろ。俺以外は中に通すな」

ともすれば横暴とも取れるその命令は、私の心を深く抉った。
余計なことはするな、所詮お前など飾り物に過ぎん。
そう言われたも同然だと思った。

「かしこまり、ました」

横たわったまま、小さく頷いた。
逆らう気力などなかった。

「……動けるようになったら私室に戻れ」

風間様は最後にそう言い残すと、立ち上がって部屋を出て行った。
残された私は、ぼんやりと天井の木目を見上げる。
どうやらもう、側にいることさえ許してはもらえないらしい。

「……これで、いいじゃない」

自分自身に言い聞かせるように、私は小さく呟いた。
そうだ、これでいい。
風間様はきっと、私のことが目障りになってきたのだ。
だから遠ざけようとしているのだ。
きっとこのままいけば、婚儀云々の話は白紙に戻るだろう。
それはずっと、私が望んでいたことのはずだ。

「これで、いい」

そうすれば私はまた自由になれる。
京の治安も落ち着いてきたのだし、この屋敷からも出られるだろう。
また以前のように、一人静かに暮らしていくだけだ。

それで、いいのだ。
それで、いいはずなのに。

深く息を吸い込むと私の中を満たす風間様の香りに、なぜか泣き出しそうになった。



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