[14]見つけた輝き
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緩やかに流れる季節が、いつの間にか冬を迎えた。
風間様と出会った頃は赤く色付き美しかった木々は葉を落とし、町は少し寂しくなった。

出歩くには少し寒い季節になったが、風間様は毎日の散歩をやめようとはしなかった。
それどころか、特に寒さを感じている様子もない。
私は冬用の厚手の羽織を出してきたというのに、風間様は相変わらず薄手の羽織を引っ掛けただけだ。
鍛え方が違うのだろうか。

風間様と連れ立って、曇り空の下を歩く。
隣を歩けと命じられたあの日以来、風間様は歩調を私に合わせてくれている。
私はといえば、本当に真横に並ぶのは気が引けて、いつも風間様の半歩後ろを歩いている。
それに対し、風間様は何も言わなかった。

今日も今日とて、二人無言で歩く。
その日辿る道順は、いつも風間様の気まぐれで選ばれていた。
今日はどうやら、町の中心辺りまで行くようだ。
私はぼんやりと道行く人や並ぶ店を眺めながら、風間様に付き従う。

「あ……」

その時、ふと目についたものに思わず足を止めた。
道沿いに並んだ店の中に、小物屋を見つけた。
その店先に並べられた簪の一つが、なぜか目を引いた。
太陽の加減だろうか、綺麗に輝いて見えたのだ。

「どうした」

よく見ようと立ち止まった私に気付いた風間様が、数歩先で振り返る。
不機嫌そうな声で問われ、私は慌てて風間様の元に駆け寄った。

「申し訳ありません」

何でもないのだと、首を振る。
そんな私を風間様はしばらく見下ろしていたが、やがてまた歩き出した。

結局、簪はあまり良く見れなかった。
欲しいとまで思ったわけではない。
だが、もう少しあの綺麗な輝きを見てみたかった。

風間様に気付かれないようにと、少しだけ振り返る。
しかしもう、そこからではどの簪が気になったものだったのか分からなかった。



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