でもまだ愛していたから[1]
bookmark


秋晴れの、雲ひとつない澄み切った青空を見上げた。
祝いの日に相応しい天気だ。
首元を飾る慣れているはずのネクタイが、今日ばかりは窮屈で仕方なかった。


俺が初めて彼女に出会ったのは、4年前の春。
入社式で偶然隣の席に座ったのが、彼女だった。
少し緊張した面持ちで俺に自己紹介してきた彼女の、真っ直ぐな瞳に惹かれた。
蓋を開けてみれば俺と彼女は同じ部署で、デスクも隣。
その時俺は柄にもなく、確かに運命とやらを感じたのだ。

その年の、同じ部署の同期は4人。
俺と彼女と、総司と雪村。
すぐに親しくなり、仕事上がりはよく4人で飲みに行ったりもした。
俺と彼女は自宅が近かったので、彼女を家まで送り届けるのはいつも俺の役目だった。
明るく前向きな彼女と過ごす毎日は、何もかもが輝いて見えた。

そんな俺たちの関係が少し変わったのは、入社から1年が経った頃。
彼女が、俺たちの上司である土方さんに告白され、交際を始めたのがきっかけだった。
仕事終わりの彼女の隣というポジションは、いつの間にか俺のものではなく土方さんのものになっていた。
しかし俺にとって土方さんは、最も尊敬できる人でもあった。
そんな人が相手だったからこそ、俺は何を言うことも出来ず、ただ二人が着実にその仲を深めていく様を見ていた。

二人の幸せを願っていた。
その気持ちに嘘偽りはない。
しかし心のどこかで、二人が別れることを望んでもいた。
果たして俺の願いは、叶ったと言うべきか叶わなかったと言うべきか。

今日彼女は、土方さんと結婚する。


prev|next

[Back]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -