カウントダウン
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12月31日。


時刻は、間もなく23時を過ぎようとしている。

カウントダウンイベントに、世間が盛り上がる真っ只中。
雑誌の取材、特別番組の収録、エトセトラを終え急いで帰宅した俺を待っていたのは、恋人の笑顔でもなければ温かい手料理でもなかった。

「よ、バニーちゃん!先に始めてるぜ」

広いリビングの真ん中には、デリカテッセンの豪勢な料理とシャンパン。
すでに空いたボトルが床に転がっている。
その周りを取り囲む、見慣れたヒーローの面々。

「遅かったじゃないハンサム」

手招きされ、大きく溜息をついた。

「そもそも、何なんですかこれは一体」

なぜ主が不在の部屋の真ん中で、こんなことになっているのか。

「何って、カウントダウンパーティじゃない」

見て分からないの、とばかりにブルーローズが笑う。
そりゃ、何をしているかなんて分かっている。
問題は、なぜ一言の相談もなく勝手に人の家でパーティを始めているのかということだが。

どうせ虎徹さんが言い出しっぺなのだ、そんな常識を説いたところで馬の耳に念仏。
諦めて、ジャケットを脱ぐとその輪の中に入った。

すぐさまグラスを渡され、シャンパンが注がれる。

「じゃあもう1回かんぱーい!」

すでに酔っ払っているらしい虎徹の音頭で、グラスが重なった。

本当に、どこまでも勝手な人たちだ。
人の都合など考えもせず、こうやってずかずかと踏み込んでくる。

でも、それが案外。

「悪くない、でしょ」

背後から掛かった声に、はっと振り向いた。
そこには、待ち望んだ姿があった。

「お疲れさま、バーニィ」

柔らかい、笑み。
グラスを脇に置いて立ち上がる。
間合いを詰めて抱きしめれば冷やかしの声が上がったが、気にならなかった。

「どこに、行ってたんです?」

会いたかった。

過密なスケジュールも、一緒に年を越すためだと思えば耐えられた。
それなのに、いなかったから。
ヒーローたちの前では押し殺していた寂しさが、今になって顔を出す。

「ごめん、ちょっと追加の買い出しに」

そう言った彼女の背後には、確かにスーパーの買い物袋。
中身はどうやらアルコールらしい。
外気で冷えた身体を、強く抱きしめた。

これで、新しい年を一緒に迎えることができる。
そう思うと、自然に笑みがもれた。

「さて、飲みましょうか」


間もなく、年が明ける。



I wish you a Happy New Year !




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