U-夢を見る-[2]でも、ナマエさんは違う。
この人は、明るくてサバサバとしていて。
気さくに、朗らかに、そして本当に楽しそうに笑う。
僕に対しても、そんな風に。
当たり前みたいに、笑いかけてくれる。
勝手な理想を押し付けたりはせず。
ヒーローだなんだと諂うこともない。
それを、嬉しいと感じている自分がいて。
「あ、君のダーリンも一緒に連れて来てね」
まあ結局のところ、単純に僕は彼女に遊ばれているだけなのかもしれないが。
「誰がダーリンですか」
それはこの際置いておくことにしよう。
「それよりナマエさん、ちょっと働きすぎじゃないですか?目の下に隈、出来てますよ」
いつ会っても、彼女はなんだか忙しそうで。
それもそうだろう。
主に僕とおじさんの専属メカニックとして働く彼女の仕事っぷりは、尋常じゃないのだ。
スーツのメンテナンスは、いつだって完璧。
毎回の出動をモニターでしっかり分析してくれているらしく、それを元に改良を加えられたスーツは出動の度に性能が上がってきている。
僕とおじさん、それぞれの癖に合わせてスペックを調整してくれたおかげで、あのスーツは最初の頃よりずっと身体に馴染むようになった。
また彼女は、それに併せてトレーニングメニューも組み立ててくれている。
その上メディカルチェックは速くて的確。
検査から処置、挙げ句の果てには薬の調剤までこなしてしまうのだから驚きだ。
僕は、人の力を借りるのが嫌いだ。
それでも、今の僕は彼女の尽力なしにはここまで来れなかったと認めている。
彼女がむしろヒーローよりも忙しく働いているのを知っているだけに、やはり心配になる訳で。
「あら、ヒーロー様に心配して頂けるなんて光栄」
だが彼女は、そうやって茶化すだけで。
はぐらかされたと思ったときにはもうすでに、彼女は僕の横を通り過ぎて歩き去っていた。
だけど、すれ違う際にほんの微かな声で。
ありがとう、と言われた気がして。
僕は慌てて振り返って、ひらりと手を振る後ろ姿を見送った。
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