瞼の裏には彼女の笑顔[2]
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「あのさ、バニーちゃん。今日なんでそんなご機嫌なわけ?」

いつもだったら、バニーちゃん、なんて呼び名に渋い顔をするくせに。
今日はそんなことまるで気にしていないらしく、笑顔を崩さないままコーヒーカップをデスクに置いた。

「わかりますか?」

そう、一言。
ちょっと視線を横に流して、照れたようにはにかまれて。
思わず面食らった。

「あー…いや、まあ」

ちょっと言葉を濁しつつ肯定すれば、バニーは小さく溜息。
だがそれは、全然嫌そうなんかじゃなくて。
むしろ、嬉しそうな吐息。

「実は今日、ナマエがロールキャベツを作ってくれるそうで」

出てきた名前は、予想通り。
だがその内容は、バニーのご機嫌さ加減にあまり見合わない気がして首を傾げれば。

「僕、ナマエの作ったロールキャベツが世界で1番好きなんですよ」

そう、微笑まれて。
思わず笑ってしまった。

「そっかそっか!楽しみだなあ」

俺からすれば、そんなこと、だ。
でも、今日の夕飯のメニューが好物だからって、ここまで幸せオーラを出すバニーが可愛く見えてくる。

そんなありきたりな、小さなことで。
こんなふうに喜べるようになった。
それを楽しみに、頑張れるようになった。
バニーがそんな幸せを見つけてくれたことが、こんなにも嬉しい。

「じゃあ、ちゃんと定時で上がらないとな」

きっと今日はオフのナマエが、バニーの家でロールキャベツを作って待っているのだろう。

「はい」

そう微笑んだ年下のバディを、俺はなんだか擽ったい思いで見ていた。

昔はそれこそ他人になんて興味がなくて、プライドばっかりが高くて。
利己的で、嫌味な奴だったのに。
いつの間にこんな、可愛いげのある奴になったのか。
嬉しい限りだと、この時は相棒の幸せな夜に思いを馳せていたのだが。

世の中、そう上手くはいってくれないらしい。


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