世界は鼓動を重ねる[1]
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R-18




がちゃり、とドアが閉まる音に沈みかけていた意識が浮上する。

「ナマエ?」

名前を呼ばれて、ゆるりと瞼を持ち上げれば。
照明が点きっぱなしの明るい室内。
見慣れた景色が、いつもと違って90度傾いていて。
頬の下には柔らかいソファ。
ああ、寝てしまったのかと。
ゆっくり身体を起こした。

リビングのドアを振り返れば、そこには。
見慣れた格好をした、恋人の姿。

「バーニィ、おかえり」

ジャケットの袖から腕を抜きながら近寄ってくるバーニィに、微笑みかける。

「ごめん、寝ちゃって…ん」

突然の、口づけ。
遮られた言葉。
ばさり、と床にジャケットが落ちた音。
それは、触れるだけのキスではなく。
呼吸をも奪うような、濃厚な。
舌を絡め取られ、口の中を蹂躙され。
流れ込んでくる唾液と、そしてアルコールの匂い。

「は…っ、ちょっ、いきなり…」

ようやく解放されたと思ったら、またすぐに塞がれて。
息が苦しいと、覆い被さってくるバーニィの胸を叩いて訴える。

「は、ぁ…バーニ、酔ってるの?」

帰ってきて早々、こんな熱烈なキスは珍しい。
素面ではありえない。

確か今日は、スポンサー企業のお偉いさんの接待だと言っていたから。
上機嫌のお偉いさんたちに、しこたまお酒を飲まされたのだろうか。
バーニィはお酒が弱い訳ではないが、そんなに強くもない。
かなりきつい匂いがするし、きっと相当酔っているのだろう。

「ああ、そうですね。酔っていますよ、貴女に」

据わった双眸、いつもより気障な台詞。
間違いない。
これはただの酔っ払いだ。

そう言ったっきり、また再開されるキスの嵐。
まずい、非常にまずい。
背中を冷や汗が伝った。
酔った時のバーニィほど、面倒くさいものはない。
それは、私が身を持って知っている。

だが、何よりもまずいのは。
分かっていてすでに熱に溺れ始めている自分だった。

「ナマエ…」

口づけの合間に、熱っぽく囁かれる名前。
唇を舐められて、ぞくりと身体が震える。
下腹部に、すでにいきり立った彼自身の熱を押し付けられて。

「ぁ…っ」

無意識に腰が揺れた。
まさかそれをバーニィが見逃すはずもなく。
くすり、と笑われる。
その微笑が、あまりに妖艶で。
もう駄目だと、観念するしかなくなった。

最初にキスをされた時点で、逃げ道などなかったのだ。
捕食者に見つかった獲物は、あとは食べられるのを待つばかり。


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