君と僕だけのもの[3]この場合は、一体何と言えば良いのか。
例えば他の男に嫉妬してくれたのなら、貴方が1番だと言えば済む。
だが、テレビの中の男も目の前にいる男も、同一人物なのだ。
バーニィにとっては嫉妬の対象になるのかもしれないが、私にとってはどちらもバーナビー・ブルックスJr.で。
優劣をつけること自体が間違っている。
テレビの中でヒーローをやっている彼も、目の前で情けない顔をしている彼も、どちらも本物だ。
ちょっと困って、手をそろりとバーニィの頬に添えた。
びくり、と震える肩。
自分で押し倒しておいて、とは言わなかった。
女の子も羨むだろう滑らかな肌を、指先で撫でて。
「バーニィ」
甘えた声を、唇から零す。
「しょうがないじゃない。ヒーローをやっている貴方も、格好いいんだから」
そう、弁解の言葉を。
「こんな格好いい人が、私の恋人なんだなあって、考えてたの」
透き通るハニーブロンドを、くしゃりと指に絡めて。
そっと微笑んで見せると。
途端に赤くなる、バーニィの頬。
照れたように視線を泳がせる姿に、愛おしさが増していく。
「…ちゃんと、見てて下さい」
俺を、と続くはずの言葉を。
首に回した腕で身体を僅かに起こし、唇を塞いで遮った。
ちゅ、と小さなリップノイズ。
「分かってるよ、バーニィ」
貴方しか見ていないと、どうしたら伝わるだろうか。
気恥ずかしさに負けてなかなか言葉にはできないが、心底惚れているのに。
きっとバーニィが思っているよりもずっと、私は彼のことが好きなのだと思う。
不意打ちのキスにびっくりしているバーニィの背中を、ぽん、と叩いた。
その意味をちゃんと察してくれた彼の身体が、突っ張っていた腕の力を緩めて落ちてくる。
それでも、全体重はかけないようにと気を遣ってくれているのが分かった。
心地好い重みと温かさ。
首筋を擽る髪に、思わず笑ってしまった。
「…みっともないと、思いましたか?」
不安げに揺れた声に、背中に回した腕の力を強めた。
思いきり、気兼ねなく甘えていいのに。
こうしてバーニィは、最後の最後で甘えたことを後悔しているような、申し訳なく思っているような素振りを見せる。
私が嫌がるとでも思っているのだろうか。
だとしたら大きな勘違いだ。
だって、この人の全てを受け止める覚悟など、とっくの昔にできているのだから。
ふるり、と首を振って否定して。
次にくる言葉が分かっているから先回り。
「謝ったら、今日はもうキスさせてあげないからね」
そう言えば、バーニィは上体を起こして私を見つめたあと。
眉を下げて、ふにゃり、と笑った。
「…はい」
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