君と僕だけのもの[1]
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そうですね、僕は市民の皆さんを助けるためにヒーローをやっている訳ですから。
やはり、誰かを救助できたときが1番嬉しいですね。
ヒーローをやっていてよかったな、と思います。

バーニィの家の巨大なスクリーンに映る、全開の営業スマイル。
格好いい台詞と共に髪を掻き上げる気障な仕種が、あまりに似合ってしまう。
そんな、ヒーローとしての恋人の姿。

バーニィの家で夕飯を食べた後、片付けくらいはさせて下さいと頼まれて。
皿洗いを彼に任せ、私はコーヒー片手にリビングへ。
何気なく点けたテレビでチャンネルを回していれば、不意に飛び込んできたHERO TVの特別番組。
視界に映ったバーニィのインタビューを受ける姿に、思わずリモコンから手を離した。

リポーターの質問に笑顔で答える姿は、まさに理想のヒーロー像を体言していて。
さすがKOHだと感心する。
メディアの前では決して崩さない、完璧な笑顔。
クールでスマート、スタイリッシュ。
非の打ち所がないハンサム。
世間で大人気なのも無理はない。
赤いスーツがこんなにも似合う男は、シュテルンビルト中を探したって彼だけだろう。
カウチに腰掛けて長い脚を組み、爽やかな微笑みを浮かべる姿。

その男は今、キッチンに立って皿洗いをしている訳で。
こんなことがばれたら、私はシュテルンビルト中の女性に刺し殺されそうだと苦笑い。
公表していないから、問題になることはないだろうが。
こうして見てみるとつくづく格好いい男だと、画面の中のバーニィを眺めた。

輝くハニーブロンドに、深いグリーンの瞳。
パーツの何もかもが、まるで計算され尽くしたかのような完璧さで彼を形成している。
さらに、眼鏡やスーツといったアイテムがその姿を引き立てて。
絵になるというか、なんというか。
バーニィなら、ファッションモデルでも俳優にでもなれただろう。
だが、彼が選んだのはヒーローだった。

取材だ撮影だとアイドルみたいな仕事も増えたが、彼はこの街のKOHなのだ。
そんな彼を、私は誇りに思う。
そして、そんな彼のプライベートを独占していることに、ほんの僅かな優越感。

私は知っている。
営業用の笑顔なんかじゃなくて、ふと零れるように見せる本当の笑顔も。
完璧なヒーローを演じる彼の、ちょっと情けない姿も。
画面の中で僕、と優男ぶる彼は、私と二人きりだと俺という一人称を使うことも。

全部全部、私だけが知っている。


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