独占したい瞳[2]
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僕も、毎日が忙しくて。
自分の時間なんて無いに等しかったけれど。
でも、ナマエのことを考えない日はなかった。
会いたいと、話したいと思っていた。
だけどそう思っていたのは、僕だけだったのだろうか。
ナマエは、寂しいとか会いたいとか、そんなふうには思わなかったのだろうか。

別に何か話し掛けた訳ではないから、無視されているということではないのだけれど。
でもこんなふうに、ちゃんと向き合ってもらえないのは初めてで。
どうしていいか分からなくなる。

鬱陶しそうに髪を掻き上げて分厚い資料と睨めっこする姿を、黙って見つめることしか出来なかった。

それだけ仕事が大変だということを理解して、労って。
邪魔をしないようにするべきなのは、分かっている。
だが、頭の中で勝手に作られていく言葉は。
ナマエは僕に会いたくなかったんですか、とか。
今は仕事のことじゃなくて僕のことを考えて下さい、とか。
そんな身勝手なことばかりで。
まるで、僕ばっかりが寂しがっていたみたいだと。
感じた温度差に、胸が締め付けられた。

子ども染みた考えだ。
どう頑張っても、彼女のように余裕が持てなくて。
それが恥ずかしいやら悔しいやら。
僕を見てほしいとそう思うのに、言葉にはできなかった。

そんな甘えたことを言って、迷惑をかけて。
邪魔だと、鬱陶しいと思われるのが恐かった。
今日は帰って、と。
拒絶されたらどうしようと、怯えが先に立つ。

それでも、彼女を求め続けた心は素直に。
その温もりに縋りたがって。
僕はゆっくりとナマエに近寄って、背後からその身体に腕を伸ばした。
恐る恐る、自分の方へと抱き寄せて。
首筋に、顔を埋めた。

「バーニィ?」

大好きな匂い、大好きな声。
腕を振りほどかれる気配はない。
その何もかもに、ただ安堵した。

「ナマエ…」

寂しかったんです。
貴女に逢いたかったんです。
邪魔をしてすみません。
でも、貴女の声を聴きたいんです。
だからどうか、私も寂しかったと言って下さい。
私も逢いたかったよ、と。
その唇で、嘘でもいいから言って下さい。

言葉にならない想いの丈を、ぎゅう、と腕の力に篭める。


やがて、ナマエが小さく身じろいで。
僕の両手を、そっと振りほどいた。
離れていく温度に、胸がずきりと痛みを訴える。

「ナマエ…」

自分でも、泣きそうな声だと思った。


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