独占したい瞳[1]
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もう5日も、ナマエに会っていない。

別に喧嘩をしたとか、何かがあった訳ではなく。
ただ単に、お互い仕事が忙しかった。

僕は、テレビの収録やチャリティーイベントやらでアポロンメディアを離れていることが多く。
ナマエの方は、新システムの導入云々で早朝から深夜までメンテナンスルームに篭りっぱなし。
この5日間顔を見ていないどころか、電話越しの声さえ聞いていない。
メールでのやり取りが、1日に1往復するくらいだった。

仕事だから仕方ないのは分かっている。
いくら同じ会社の社員でも、それぞれに別の仕事があって。
ナマエはナマエの仕事を頑張っている。
そう、理解はしているのだが。
心は正直だ。

ナマエに会いたい、その声を聴きたい、笑顔を見せてほしい、と。
寂しさに悲鳴を上げる。
彼女に会えない日が続くと不安になり、日常が色褪せていく。
寂しくて、どうしようもなくなる。

アルコールではごまかしきれない、胸にぽっかりと空いた穴。
情けない話だと、思ってはみても。
彼女の存在に慣れすぎた自分は、孤独への耐性が弱くなってしまった。

以前は独りでいることが当たり前で、それを良しとしていたのに。
今はこんなにも、彼女の温もりに飢えている。

会いたい。
会って抱きしめたい。
バーニィ、と名前を呼んでほしい。
もう、限界だった。


時刻は23時を少し回ったところ。
僕は携帯電話と車のキー片手に、ジャケットを羽織って自宅を飛び出した。

空いた夜道を、取り締まりをしていたら間違いなく引っ掛かりそうなスピードで飛ばす。
真っ赤なスポーツカーを、ナマエの自宅マンション前に乗りつけた。

エレベーターで8階まで。
ドアの前に立って、インターホンを鳴らす時間すら待ちきれなくて。
合鍵を使ってドアを開けた。
リビングから明かりが漏れている。
どうやらちゃんと帰って来ているらしい。

「ナマエ?」

リビングのドアを押し開けて、中を窺い見れば。
毛足の長いラグの上に座り込んで、ローテーブルの上に開いたノートパソコンに向き合う姿。
会いたくて仕方なかった、その横顔。

「バーニィ」

振り向いたナマエは、驚いたように僕を見つめて。
だがその視線は、すぐにパソコンの画面に戻された。

「ごめん、散らかってて」

言葉だけが、僕の元に届く。
確かにいつもは物の少ない部屋が、いまはテーブルの上も床の上も書類にまみれていた。
ファイルが乱雑に積み上げられ、あちこちに付箋が貼られた資料が散らばっている。

仕事から帰ってきてそのままなのか、ナマエはまだパンツスーツ姿のままで。
カタカタとキーボードを叩く姿に、申し訳なさと寂しさが込み上げてきた。


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