君とコーヒーを[2]
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基本的に私は、朝食を家で摂る。

トーストとサラダ、たまに卵料理がついたり。
休日は、ずいぶん前に友恵さんから教わった和食に挑戦したりもする。

バーニィが泊まりに来た日や、私がバーニィの家に泊まった日の翌朝は、私が食事を作って2人で食べるのが習慣になっている。
普段のバーニィが、大抵カフェで朝食を摂っていると知ったのは、実は最近だ。
朝はあまり量を食べないらしく、カフェの軽い食事が丁度良いらしい。

昨夜、そのカフェでの朝食に誘われた。
たまには朝に待ち合わせ、なんて新鮮じゃないですか、と。
確かにその通りだ。

私たちの待ち合わせは大体夜仕事が終わったあとで、朝一緒にいるのはその前の夜から一緒だからだ。
朝から待ち合わせなんて、したことがない。

それもいいかもしれない、そう思って。
私は今、バーニィに説明された通りシュテルンメダイユ地区ウエストゴールドの街を歩いている。

今日はいつもより気温が低いらしく、朝ということもあって少し肌寒い。
舗装されたタイルの上にヒールの音を響かせながら、目的地へと向かう。
周りにはちらほらと、通勤途中らしい人の姿。
秋風が髪をさらっていく、僅かに金木犀の甘い匂いがした。
秋の空は澄んでいて、高い。
雲一つない、快晴だ。

バーニィの行きつけと言うからには、やたらと高級そうなカフェを予想していたのだが。
辿り着いたのは、レンガ造りに見せ掛けた外観がお洒落な、こぢんまりとした店だった。
店の入口には、手書きのボードにお勧めのメニューが書かれている。

入口に向かって左手側に、テラス席が設けられていた。
白い円形のテーブルが3つと、それぞれに椅子が2脚ずつ。

その1番奥のテーブル席に、見間違うはずのない姿。
見慣れた赤いライダースジャケット。
綺麗な曲線を描く、ハニーブロンド。
コーヒーを片手に、脚を組んで。
背後から照らす朝陽に包まれた、恋人の姿。
光を受けて、髪の輪郭が淡く輝いていて。
その眩しさに、瞼の裏が痛くなる。
目を細めて、優雅にマグカップを口元に運ぶ様を見つめた。

肩口で跳ねた髪が、輝きながら揺れている。
まるで、全身が淡い光に包まれているかのようで。
いつも見ているその人なのに、なぜかとても特別に感じて見惚れた。


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