最期の刻[2]
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これから先、ずっと2人で。
時間を重ねて、愛し合って。
優しい思い出をたくさん作って。
幸せに生きていく、はずだったのに。
そんな人生の第一歩を、踏み出したばかりだったのに。
しわくちゃのおじいちゃんとおばあちゃんになるまで、一緒に生きるはずだったのに。

こんなところで、彼女との約束も守れずに、死ぬだなんて。
悔しくて、情けなくて。
涙が止まらない。

ナマエ。

心の中で、名前を呼べば。
まるで走馬灯のように、甦る記憶。

「私も、貴方のことが好きだよ、バーニィ」
「戦って、私のヒーロー」
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「大好きだよ、バーニィ」

彼女がくれた、たくさんの言葉。
たくさんの幸せな思い出。
柔らかく、優しく。
いつだって僕を包み込んでくれた。
僕の、光。


すみません、ナマエ。
貴女との約束を、守れなくて。
先に逝って、すみません。
もう、傍にいられない。
ごめんなさい。
どうか、どうか泣かないで。
決して、絶望しないで。
僕がいなくても、ちゃんと世界は回るから。
貴女なら、大丈夫。
きっと、大丈夫だから。
だから、どうか生きて。
生きて、幸せになって下さい。


僕の、大切なナマエ。

愛しい、愛しい貴女。
僕のために、泣いたりしないで。
貴女には、笑顔が似合うから。
笑って、生きて。
天国で、いつまでも見守っているから。
貴女の幸せを、願っているから。
ちゃんと、待っているから。
どれだけ遅刻しても怒らないから、ゆっくりおいで。
できるだけ、ゆっくり。
僕はいつまでも、待っているから。

そしていつか生まれ変わったら、もう1度出逢おう。
必ず、見つけるから。
僕が貴女を、必ず探し出してみせるから。
もう1度、恋をしよう。
もう1度、始めよう。

だから、ナマエ。
どうか泣かないで。


もう間もなく、灼熱の光に身体を焼き尽くされるその瞬間まで。
僕はただ、祈っていたかった。
貴女の幸せを、ただ。



あの夜から、もうずいぶんと長い時間が過ぎた。
あの時死ぬはずだった僕の命は、まだちゃんと繋がっている。
僕は今、ナマエと共に生きている。
2人の約束を、守っている。

「ナマエ」

あの時呼べなかった名前を、今はちゃんと呼べる。



最期の刻
- まだ、死ぬわけにはいかなかった -




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