白銀の波に揺られ[1]
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薄い膜の張られた視界に、ぼんやりとした光が差し込む。

緩やかに浮上する意識。
自分の意思とは別に瞼が持ち上がって。
曖昧な世界の中、まず初めに映った金色。
癖のある髪に柔らかな光が反射して、きらきらと輝いている。
ぼやけた視界が、徐々に輪郭を際立たせて。
目の前に、恋人の寝顔があることを教えてくれた。

横向きに眠るバーニィの顔に、金の髪がかかっている。
隙間から覗く、穏やかな表情。
透き通るような長い睫毛と、色素の薄い唇。
静かに寝息を立てるバーニィの姿を、ぼんやりと眺めて。

あぁ朝か、と。
ようやく脳が働き始める。

昨夜ベッドに入ったのが遅かったせいか、覚醒までにはまだ時間が掛かりそうだ。
身体を捻って、ベッドサイドのラックに置かれた携帯電話に手を伸ばす。
目元を擦りながら液晶を確認して。
表示された時刻は、まだ6時5分。
出勤までの時間はたっぷりある。

そう認識した途端、ベッドを出る気力なんて失せてしまって。
携帯電話を元に戻すと、再びバーニィに向き合った。

起こさないように気をつけながら、輝く金髪に指先を絡める。
柔らかくて、さらさらで。
羨ましい話だ。

眼鏡を外したその寝顔は、いつもよりうんと幼く見えて。
可愛いな、とまで思える。
怒られそうだから、決して本人には言わないが。

バーニィは隠しているつもりかもしれないが、彼は自分が私よりも年下なことを幾分か気にしているようで。
ついうっかり口を滑らせて可愛いと言った時は、面倒なほど拗ねられた。
そういうところが可愛いんだけどな、とはもちろん言えなかったけれど。

合理主義で器用そうで、実年齢よりも大人びて見られがちなバーニィは。
実は結構不器用で直情的で、子どもっぽい。
そんなところも、好きなのだけど。
その、他人には見せない素の姿を私に見せてくれている、という事実は私を嬉しくさせる。
ベタ惚れだなあ、と心の中で呟いて。
バーニィの胸元に頬を寄せた。

さらりとした素肌は、バーニィの体温を直に感じさせてくれる。
シーツの中、お互いに昨夜の名残を残したままの姿で。
一糸纏わず眠りに落ちるほど愛し合った情事を思い出し、思わず頬を緩めた。

こうして彼と同じ朝を迎える日が増えてからもう随分経つが、今だに私の胸は時々この男のせいできゅん、と鳴く。
彼の隣りにいることは当たり前のような事実なのに、でもそうではないようで。
不思議な感覚だった。


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