白銀の波に揺られ[2]さて、そろそろ時間だ、と。
腕に力を入れて、バーニィを起こさないように気をつけながら身体を起こす。
ベッドの脇に両足を下ろしたところで、不意に手首に感じた温度。
振り返って、ベッドに付いた自分の右手を見下ろせば。
手首を掴む、私のそれよりも大きくて筋張った手。
「バーニィ?」
起きたのだろうか、と名前を呼んだ。
しかし返事はない。
「起きたの?」
再度、声を掛ければ。
「…ん、ぅ…」
そんな呻き声が返ってきた。
まだ夢の中にいるらしい。
くすり、と笑ってもう1度ベッドに逆戻り。
バーニィの両手が、しばらく宙を彷徨ってから私の身体を緩やかに抱きしめた。
今日の彼は随分と甘えん坊だ。
「バーニィ、起きて」
さほど起こす気がないとバレてしまいそうな小声で囁く。
バーニィは、半分寝たままのような状態で。
「ん…、ナマエ…」
舌足らずな口調で名前を呼ばれた。
腰に回された手が、するりと肌の上を滑る。
優しいスキンシップだったそれが、じわじわと欲を孕んだ動きに変わり始めたのを感じて。
「ちょ、バーニィ?」
牽制の意味を込めて呼びかけてみても、彼は小さな寝息を零すだけだ。
腰を抱く腕に大した力は入っていないから、抜け出すことは容易だと分かっている。
なのにそうしない私は、随分とこの男に甘いのだろう。
彼はいつの間に、こんな上手な甘え方を身につけたのか。
私が拒絶できないと分かってやっているのだろうから、何とも悔しい。
「ナマエ…」
寝起き独特の、少し甘ったるい掠れた声。
反則だなあ、と苦笑い。
腰にあったはずの彼の手は、いつの間にか私のお尻を触っていて。
「こーら、バニーちゃん」
柔らかく窘める。
今日がオフだったら、このまま甘い誘惑に乗せられるのも悪くないけれど。
生憎そろそろ仕事の時間だ。
2人揃って遅刻なんてしようものなら、虎徹さんに何を言われるか。
やっらしー、なんて馬鹿みたいに笑う姿が容易に想像できてしまう。
それだけは避けたい。
そこまでだよ、と。
バーニィの腕をぺしりと叩けば、彼は不満そうに唇を尖らせた。
私がいけない訳ではないはずなのに、ちょっと申し訳ない気がしてくるからタチが悪い。
「ほら起きて、朝ごはんにしよう?」
がばり、と上体を起こして。
ようやく目を開けて寂しげに見上げてくるバーニィに捕まる前に、私はベッドを抜け出した。
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